Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション4
腎動脈エコーの撮り方と判定

(S262)

腎動脈エコーの撮り方と判定

Detection and evaluation of renal artery stenosis with color duplex ultrasonography

大平 未佳

OOHIRA

東北大学病院診療技術部

キーワード :

【はじめに】
腎血管性高血圧症(renovascular hypertension:RVH)は腎動脈の狭窄や閉塞により,腎への灌流が低下することで高血圧をきたす疾患である.腎動脈病変の原因の多くは粥状硬化症であるが,線維筋性異形成,大動脈炎症候群,大動脈解離などもあげられる.動脈硬化性疾患は進行性であり,腎動脈狭窄を放置すると腎不全にいたることもある.また近年は,軽度の腎機能障害も心血管イベントのリスクになることが報告されていて,腎動脈狭窄症の適切な診断・治療が望まれる.腎動脈エコーは造影剤を使わずに血流速度が測定でき,腎臓の血行動態や腎動脈狭窄度を評価することができる.また経過観察や治療効果の判定にも用いることができる.
本講演では,超音波による腎動脈の描出手技および判定法について解説する.
【腎動脈解剖と描出法】
腎動脈は,上腸間膜動脈起始部のやや尾側で,腹部大動脈から左右ほぼ同じ高さで起始する.最も典型的な解剖では,腎動脈は腎門部直前で腹側枝と背側枝に分かれ,さらに腎門部では5本程度の区域動脈に分枝する.20-30%では複数の腎動脈が存在する変異があるため注意が必要である.区域動脈はさらに分枝して,腎実質に入り葉間動脈となる.一般には3.5MHz〜5.0MHzコンベックスプローブを使用するが,高度狭窄で速い流速を測る場合や肥満のある被検者ではセクタプローブがより有用である.まず,心窩部横走査にて狭窄の好発部位である腎動脈起始部を同定し,パルスドプラを用いて60°以内の入射角で腎動脈起始部血流の収縮期最高血流速度(peak systolic velocity:PSV)と拡張末期血流速度(end diastolic velocity:EDV)を測定する.上腸間膜動脈起始部レベルで腹部大動脈のPSVを測定し,腎動脈と腹部大動脈のPSV比(renal/aorta ratio:RAR)を算出する.正中からの描出が困難な場合や適切な観察角度を設定できない場合は,側腹部から腎動脈本幹の描出を試みる.次に,側腹部ないし背部から腎を描出し腎長径を測定後,腎内動脈の血流を測定する.腎内の血流は上極,中極,下極でわけて観察すると分枝レベルでの狭窄や血流障害の判断に有用と考えられる.
【測定項目と判定基準】
腎動脈基始部のPSVが180cm/secを超えた場合に60%以上の有意な腎動脈狭窄を疑う.さらにRARが3.5以上の場合に有意腎動脈狭窄と判定する.また,腎内動脈の血流を測定することで,腎硬化の評価や起始部での腎動脈狭窄の補助診断を行うことができる.腎内血流速度のResistive Index(RI)が0.8以上の場合,腎実質障害が示唆される.起始部に有意狭窄が存在する場合,腎内動脈では血流波形のacceleration timeの延長や,PSVとRIの低下が認められる.腎サイズの左右差,腎萎縮,皮髄コントラストの低下は腎実質の障害を示唆する.
【まとめ】
腎動脈エコーは決して難しい検査ではないが,狭窄のある細い腎動脈を描出し,狭窄度と相関するPSVを測定するには,一定のトレーニングが必要である.高血圧患者の1%は腎動脈狭窄症が原因といわれているが,診断されていない腎動脈狭窄症も多いと考えられる.本検査の広い普及により,従来見逃されがちであった腎血管性高血圧患者が良好に診断され,適切な治療に繋がることが望まれる.