Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション1
超音波診断装置の人間工学的デザインについてー超音波ベンダーの各装置の比較検討

(S256)

超音波デザインと作業関連運動器障害(WRMSD)

Work-Related Musculoskeletal Disorders and Ergonomics Design of Ultrasound Scanner

土肥 美智子

DOI

国立スポーツ科学センタースポーツ医学研究部

キーワード :

Work-Related Musculoskeletal Disorders(作業関連運動器障害,以下WRMSD)とは,腰痛や頸肩腕障害,変形性関節症,腱鞘炎,手根管症候群など,原因となる負担が労働や生活に伴う作業にあると考えられる筋肉や骨や関節などの疾病を広く捕らえた用語で,近年欧米を中心に広く使われるようになっている.米国Bureau of Labor Statistics(BLS)の報告では労働者に発生する筋骨格系疾患の実に62%が繰り返す小外力により発生していると考えられ,それによる欠勤は705800件に上り,年間130億から200億ドルの費用がその欠勤と補償に費やされていると報告されています.しかし,本邦ではこの様な調査が大規模になされたことはなく,様々な作業に関連した疾患の実態は把握されておらず,従ってその対策も組織的にとられるような状況には況にはなく,超音波検査に携わる医師や検査士のWRMSDについては本邦での実態の把握や公的機関による対策の提言もない.
しかし日本以外の諸外国の報告によると,超音波検査業務に伴いWRMSDが発生することは明確である.具体的には超音波検査においても腰痛や頸肩腕障害,腱鞘炎,手根管症候群の発生が問題となる.
頸肩腕障害は,1973年に日本産業衛生学会で職業性頸肩腕障害と命名された疾患の略称であり.それに先立って,64年に旧労働省は「キーパンチャー等の手指を中心とした疾病の業務上外の認定について」を発表して,「いわゆる頸肩腕症候群等を加え手指作業の上肢疾患」という表現で職業病として認めている.超音波検査においても長時間に検査によって,同じ姿勢を続ける,あるいは手,指,腕,肩の筋肉を繰り返し使用した結果,腕が痛い,腕がしびれる,指がしびれる,肩が痛いといった症状がでてくる.
(職業性)腰痛は,労働に関連して発生する障害の中で最も多い.本邦でも職業性腰痛の発生は,行政の指導,努力で急性のものは減少してきている.しかし,慢性の負荷によって発生すると考えられる職業性腰痛は,その発生過程・原因が解明されていないため対応策が見いだせない現状である.超音波検査においても同様の現状であると考えられる.
手関節の腱鞘炎と手根管症候群も超音波検査関連では,その報告は多い.超音波検査による手関節の腱鞘炎は,手関節を超音波検査によって酷使することにより腱鞘が炎症をおこし,腱のスムーズな通りを邪魔している状態である.症状としては腱より先に筋肉の異和感,不快感,疼痛が生じる.手根管症候群とは手指を支配する正中神経が手関節掌側の手根管で圧迫され手指のしびれ,母指の筋力低下をきたす疾患である.これらの腱鞘炎や手根管症候群は超音波検査によって起きるばかりではなく,その診断にも超音波検査が有用であるという特徴がある.
以上のようなWRMSDについて,今回のライブセッションでは他の演者が解説する人間工学的デザインによる改善により,具体的にどのようなWRMSDの予防が期待できるかを解説・検討したい.