Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション1
超音波診断装置の人間工学的デザインについてー超音波ベンダーの各装置の比較検討

(S255)

工学デザインからみた超音波診断装置

An Engineering Design Approach of Ultrasound Scanner

平井 直哉

HIRAI

工業デザイナー㈱デジリア

キーワード :

超音波診断装置は,画像表示装置がCRTからLCD(液晶パネル)を採用するようになったことやハードウエアの進歩により小型軽量化が可能となったことなどにより,柔軟で多様なデザインが可能となった.しかし21世紀に入り,超音波診断装置の人間工学的デザインの重要性が,検査士の身体的傷害防止の観点から特に米国においてトピックとなってきたことにより,単なるデザインではなく,より機能的なデザインが要求されるようになってきた.超音波診断装置における人間工学的デザインのポイントは,超音波診断装置を使用する医師や検査士の体格に合わせて,装置の各パートをいかに調節可能にするように設計するかが重要である.
今回は据置型の超音波装置を対象とするが,米国のSociety of Diagnostic Medical Sonographyが定めたIndustry Standards for the Prevention of Work-Related Musculoskeletal Disorders in Sonography (http://www.sdms.org/pdf/wrmsd2003.pdf)によると,装置を使用する医師や検査士(以下検者)が装置本体については,移動のために付いているキャスターを容易にロックあるいはロック解除できるか,装置に付いているDVDなどの光学ドライブを含む記録系へのアクセスが容易であるか,フットレストに足を置いたときの姿勢に無理がないか,探触子ホルダーへの検者のアクセスが容易かどうか,探触子ケーブルがコンソール操作の邪魔にならないかどうか,探触子のケーブルの調整が可能かどうか,探触子接続ポートにおいてコネクタの操作を片手でスムーズに行うことが可能かどうか,装置の移動が一人でスムーズに行えるかどうか,また検者が装置移動のためのハンドルを体格に合わせて調節することが可能かどうかなどのチェック項目がある.また操作パネルについては,検者の手首(手関節)と前腕が自然な姿勢になるようにパネルを移動して調節することができるか,座って操作する場合,操作パネルが検者の足の邪魔にならないような位置に移動し調節することが可能かどうかというチェック項目がある.さらにモニターについては,操作パネルとは別途に,手首(手関節)と前腕が自然な姿勢をとれるように調節可能かどうか,頚部を無理のない姿勢に保ちながら,片手でモニターの位置を操作可能かどうかなどのチェック項目がある.探触子については,軽量で,最小のトルク(回転力)で手首のバランスを保ちつつ,手の過度な伸展なしに手のひらで容易に握れるグリップを持っているかどうか,適切なグリップのサイズとスリップ止めを有しているかどうかなどのチェック項目がある.工業デザインの観点からは,以上のようなチェック項目を満たしている装置が理想的な人間工学的デザインを有する超音波診断装置であるといえる.今回のセッションでは,各ベンダーの据置型の装置について,これらの個々の項目について,超音波検査に携わる医師や超音波検査士とともに検証していきたい.