Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ2
産婦人科における3 D データの応用

(S252)

婦人科腫瘍における3D power Dopplerの応用 −子宮頸癌を中心として−

Application of 3D power Doppler ultrasonography in gynecologic tumor

田中 和東

Kazuharu TANAKA

トヨタ記念病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology,Toyota Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
3次元超音波装置では体積の測定が可能で,power Dopplerを併用することで血流の数値化が可能である.今回3次元超音波検査の婦人科腫瘍における有用性を検討した.
【対象】
子宮頸癌症例30例(扁平上皮癌22例,腺癌5例,腺扁平上皮癌2例,小細胞癌1例)を対象とした.臨床進行期はIb期11例,II期9例,III期5例,IV期5例であった.治療法の内訳は,手術単独療法19例,主治療前化学療法(NAC:neoadjuvant chemotherapy)+手術療法4例,NAC+放射線療法2例,放射線単独療法3例,同時化学放射線療法2例であった.
【方法】
治療前にVoluson 730 Expert及び3次元経腟プローベ(5-9MHz)で検査し,データをハードディスク保存後,VOCAL(Virtual Organ Computer Aided Analysis)を用いて,手動で測定部位の辺縁をトレースし長軸を中心に自動的に30°ずつ回転させ,腫瘍を3次元的に描出し解析した.そのうち手術単独療法以外の11例では,治療1,2ヵ月後も超音波検査を行い,MRIで治療前,治療1,2ヵ月後の腫瘍体積を計測し治療効果を判定した.治療1-2ヵ月後の体積変化率が40%以上の症例(治療反応群)が7例で,40%未満の症例(治療不応群)が4例であった.
VOCALでは自動的に体積を計算し,MG(Mean Gray:測定部位の平均輝度)と3種類の血流パラメーターをヒストグラム機能で算出可能である.3種類の血流パラメーターとして,Vascularization Index(VI),Flow Index(FI),Vascularization Flow Index(VFI)があり,VIはカラー・ボクセルの割合から,組織の血管密度を想定した数値で,FIはカラー・ボクセルの平均強度から,組織における血流の平均量を想定した数値である.またVFIはVIに信号強度を加味して測定し,血流量を想定した数値となっている.
治療前後のMRIで計測された体積と3次元超音波検査で計測された体積の関連性,病理組織型別のMGを検討した.治療反応群と治療不応群での治療1ヵ月後の3次元血流パラメーター変化率をROC(Receiver Operating Characteristic)分析し,治療効果予測における最適なカットオフ値及びその感度と特異度を検討した.
【結果】
治療前後のMRIでの腫瘍体積と3次元超音波での体積は非常に強い相関を認めた.病理組織別のMGの平均値は扁平上皮癌で33.9,腺癌で37.2,腺扁平上皮癌で31.7,小細胞癌29.7で有意差を認めなかった.
治療反応群と治療不応群での,治療1ヵ月後のVI,FI及びVFI変化率のROC曲線下面積は各々0.89,1,0.89で有用であることが示唆された.最適なカットオフ値はVI変化率で24.2%,FI変化率で8.3%,VFI変化率で26.6%であった.そのカットオフ値におけるVI,FI及びVFI変化率の感度はすべて100%で,特異度は各々75%,100%,75%であった.
【結論】
3次元超音波検査は腫瘍体積の計測でMRIと比較して利便性に優れ信頼性も遜色なかった.MGは子宮頸癌の組織型の鑑別に有用ではなかった.治療1ヵ月後の3次元血流パラメーター変化率は,子宮頸癌の治療効果予測において有用な可能性が示唆された.しかしpower Dopplerを併用するのでモーションアーチファクトの発生や,撮像時間は短時間であるが解析に時間を要する問題点もあり改良が必要である.

【参考文献】
Pairleitner H, et al.:Three-dimensional power Doppler sonography: imaging and quantifying blood flow and vascularization. Ultrasound Obstet Gynecol 1999; 14: 139-143