Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ2
産婦人科における3 D データの応用

(S250)

胎児心臓超音波検査における4次元超音波法(STIC法)について

Estimation of fetal cardiac screening by four-dimensional (4D) ultrasound with spatio-temporal image correlation (STIC)

福家 信二, 神崎 徹

Shinji FUKE, Toru KANZAKI

神崎レディースクリニック産婦人科

Obstetrics and Gynecology,Kanzaki Ladies Clinic

キーワード :

先天性心疾患は胎児100人に一人と,先天性疾患の中で最も頻度が高い.そして本疾患では,出生後に動脈管の閉鎖や卵円孔の狭小化により重篤化することがあり,周産期死亡につながっている.しかし,胎児の心臓検査には高度な技術を必要とすることから,四腔断面以外の大血管流出路等の検査はほとんど行われていない.このため簡便でより優秀なスクリーニング検査法ができれば,予後不良を回避できる可能性がある.
従来の超音波検査の問題点は,「それが高度の技術を要し,検査者の技量に依存した検査であること」,「検査の再現性と情報の共有化に制限があること」などが挙げられる.一方,STIC法は,1回のスキャニングで胎児心臓の立体構造と経時的変化を収得できる検査法であり,得られたデータは電子化され,検査終了後に,必要な断面像・立体像を再構築できる.この利点から,STIC法は従来の限界を超えると考えられている.
しかしながら,「胎児心臓スクリーニング検査において本当にSTIC法が従来法に比べて有用であるのか?」,「どのようなSTIC検査法が最も良いのか?」,「STIC法を使った比較的大規模な胎児心臓スクリーニングシステムは有効なのか?」などの疑問点がある.
以上をふまえて「胎児心臓スクリーニングにおけるSTIC法と2次元超音波法の比較検討」と「大阪におけるSTIC法を使った胎児超音波スクリーニング検査の報告」について紹介する.
【胎児心臓スクリーニングにおけるSTIC法と2次元超音波法の比較検討】
「どのようなSTIC検査法が最も良いのか?」と「STIC法が2次元超音波検査法に比べて有用か?」を調べる目的で,89症例に対して, 4 chamber viewからのSTIC法 (Transverse STIC法),Aortic arch あるいはDuctal arch viewからのSTIC法 (Sagittal STIC法),2次元超音波検査法の3種の検査を行い,胎児心臓の基準6断面(4 chamber view, 3 vessels view, 3 vessel trachea view, Aortic arch view, Ductal arch view, Atrial veno view)の検出率を検討した.その結果,Sagittal STIC法は,3種の方法の中で,評価断面描出率が高かった.またTransverse STIC法は従来検査法とほぼ同等の検査結果が得られることが示された.
【大阪におけるSTIC法を使った胎児超音波スクリーニング検査の報告】
府下8施設において,transverse STIC法を用いて胎児心臓スクリーニング検査を行い,5名の解析医が診断を行った.有効対象症例数は1016例で,検査陽性例は26例であった.この26例は2次検査を受けて最終的に5例に絞られ,内3例に心奇形を認めた(ファロー四徴症,肺動脈閉鎖を合併した三尖弁閉鎖,単心室,各1例).従って1次スクリーニングでの陽性反応的中率は11.5%であった(2次精査後の陽性反応的中率は60%).
一方検査陰性例990例の内4例の偽陰性症例を認めた(心室中隔欠損2例,肺動脈狭窄1例,総肺静脈還流異常症1例).結果より,偽陰性症例であった心室中隔欠損例・総肺静脈還流異常例の診断には血流情報の取得が必要であると考えられた.このため今後のスクリーニングには,血流情報の取得も可能な検査法の開発が望まれる.
最後にSTIC法は従来の2次元超音波法に比べ有用である可能性があり,血流情報を追加したSTIC法を使用できれば,スクリーニング検査法として確立できる可能性があると考えられる.