Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
超高周波超音波診断(超音波生体顕微鏡)の眼科領域における応用

(S248)

原発閉塞隅角症(緑内障)における毛様体脈絡膜離の超音波生体顕微鏡診断

Ultrasound biomicroscopic diagnosis of uveal effusion in primary angle closure (glaucoma).

酒井 寛

Hiroshi SAKAI

琉球大学医学部附属病院・眼科

Ophthalmology,University of the Ryukyus

キーワード :

 超音波生体顕微鏡(UBM)は原発閉塞隅角症および原発閉塞隅角緑内障:PAC(G)の診断には欠くことの出来ない検査となっている.これは,UBMが隅角構造を断面として描出可能である点,および,光学的に観察不可能な虹彩の後方の組織,例えば毛様体などが描出可能である点が挙げられる.毛様体は調節を司る筋肉組織であるが,房水の産生と排出においても重要な役割を果たしている.興味深いことにUBMを用いてPAC(G)眼の毛様体を詳しく観察すると微小な毛様体・脈絡膜剥離(Uveal effusion)が存在する症例が見つかった.
 2001年に,PACの急性発作後にレーザー虹彩切開術を施行しuveal effusionを呈した症例の経過と前房深度との関連について症例報告を行った.過去にも急性発作眼における脈絡膜離の症例報告はあったが,この時点ではuveal effusionとPACの関連については知られてなく,急性発作とその治療,特にアルゴンレーザー虹彩切開術による影響があるのではないかと考察した.また,uveal effusionの存在と前房深度の関連についても考察した.その後,2003年にレーザー虹彩切開術後のuveal effusionについて報告した.この論文において,アルゴンレーザーがレーザー虹彩切開術後のuveal effusionのリスクであることを明らかにした.この研究と同時期にレーザーも急性発作の既往もない症例においてもuveal effusionの存在する症例があることを発見し,その頻度や病型,治療との関連について前向きの症例研究を行なった.その結果,uveal effusionは開放隅角眼においても発見されたが,PAC眼,特に急性発作後の眼には特に頻度が高く,発作僚眼にも多いこと,慢性PAC眼では頻度は低いが開放隅角眼より高い頻度で観察されることが明らかとなった.また,uveal effusion の存在するPAC眼は前房深度が浅いことも判明した.この結果より,uveal effusionが原発閉塞隅角症に潜在することを示すことができた.PACにおけるuveal effusionは浅前房と関連していることから,今まで知られていなかったPAC(G)の発症病理の一部を説明できるものと考えている.2008年には,シンガポールから追試の結果が発表され,急性および慢性PAC(G)において同様にuveal effusionが認められた.PACにおけるuveal effusionは日本人以外でもほぼ同様に認められるものと考えられる.
 本講演ではUBMを用いて行なったUveal effusionの研究とその意義について解説したい.