Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ1
超高周波超音波診断(超音波生体顕微鏡)の眼科領域における応用

(S247)

超音波生体顕微鏡の概略

Outline of Ultrasound Biomicroscopy

宇治 幸隆

Yukitaka UJI

三重大学大学院医学系研究科神経感覚医学講座眼科学

Neuroscience Department of Ophthalmology, Mie Graduate University

キーワード :

超音波生体顕微鏡(Ultrasound Biomicroscopy:UBM)が最初に発表されたのが1990年で,その時の市販モデルがZeiss-Hmphrey社のmodel 840である.その後,これは製造中止となった.現在はイタリヤのOPTIKON社のHi Scanや,国産のトーメーコーポレーションのUBM,UD-6010が入手できる.特に国産のUD-6010はmodel840の欠点が改善されて,非常に使いやすくなっている.アイカップを使用した水浸式である点はmodel840と変わりはない.振動子周波数が40MHzにもかかわらず50MHzのmodel840と同じ高解像度(50μm×50μm)を得ている.走査方式は電磁式リニアスキャンであり表示範囲は幅9mm,深さ6mmと広範囲を1画面に描出することができて,瞳孔縁から毛様体扁平部までの観察が一度で可能である.また毛様体扁平部より後極側の観察も容易である.本体のUD-1000/6000では,静止画像の保存がコンパクトフラッシュへの保存となり,その後の画像処理に便利である.
 眼科領域におけるUBMの活躍の場は主として緑内障診療である.緑内障診療においては,房水流出の場である隅角の観察は隅角鏡によって行われ,現在でもその重要性は揺るぎないが,検者によってその所見にばらつきがあったり,時として隅角観察が困難な症例もある.UBMは隅角鏡では観察できない毛様体,虹彩内部,後房,毛様体上腔,濾過手術後の濾過胞内部や強膜内の房水流出路などの所見が必要な時や,隅角鏡による観察が困難な狭隅角眼の診察には有用である.ただし,隅角鏡所見で得られる隅角部の新生血管,炎症性滲出物,色素沈着,軽度の分化不全などはUBMで観察することはできないので,眼科医には細隙灯顕微鏡検査や隅角鏡検査を基本として,隅角鏡検査の短所を補うように,またUBMの長所を生かした利用に心がけるよう推奨している.
 UBMの特徴を列挙すると,1)高周波数によって高解像度を持ち,2)暗所での隅角部断面像をとらえられるので,狭隅角眼において重要な意味を持つ明暗による虹彩形状の変化が分かること,3)角膜混濁の有無にかかわらず観察可能なこと,4)動的な変化も記録できること,5)無侵襲で繰り返し検査できること,6)得られた画像の自動定量解析ができることなどの特徴を持ち,緑内障診療に有用である.また幅9mm,深さ6mmの範囲の観察ができることから緑内障だけでなく,毛様体を含め眼底周辺部の観察ができることから他の疾患にも応用が広がっている.
 講演では以上以外にもアイカップの工夫によって虹彩の動的な変化をとらえられることや,普通の方法ではできない暗所隅角鏡観察とUBMとの比較なども紹介し,UBMの有用性を述べたい.