馬場 一憲

Kazunori BABA

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター

Center for maternal, fetal and neonetal medicine, Saitama Medical Center, Saitama Medical University

キーワード :

　胎児の発育異常や大半の形態異常は，超音波断層法によって発見できる．しかし，超音波断層法では発見が困難であったり手間取ったりする症例も少なくなく，3次元超音波が有用なケースも存在する．
【3次元超音波の特長】
　3次元超音波はリアルな胎児体表の3次元像だけでなく，骨格や嚢胞部分の3次元像などを描出することもでき^1，2），胎児の形態を立体的に把握するのに有用である．また，任意の断面を構築して表示することが可能なことから，胎児の位置や向きの関係で超音波断層法では描出困難な断面も容易に描出することができる．また，3次元超音波では体積計測も可能である．
　3次元超音波では，3次元空間のすべての情報が3次元データセットとして保存可能である．このデータセットさえあれば，妊婦健診後に検査をやり直す，あるいは遠隔地にいる専門医へデータだけを電送して診断してもらうことも可能である．
【妊婦健診における3次元超音波】
　妊婦健診で，はじめから3次元超音波を使うことは，多くの場合，時間を浪費することになりやすい．先ず，超音波断層法により胎児全体をチェックして，異常が疑われる症例に対してのみ3次元超音波を使用するという使い方が効率的と考えられる．
　ただし，下記のように妊婦健診でも3次元超音波を併用することが効率的と考えられる場合もある．
1）妊娠初期に胎児全体の3次元像を表示することによって，四肢の異常の有無や隆起性病変の有無を一度に確認することができる．
2）検査時の胎児の位置や向きによって，頭臀長などの胎児計測に適した断面が得られないような場合でも，直交3断面表示によって最適な断面を短時間に描出することができる．
3）心臓大血管は，超音波断層法で各断面を順に確認していくことでスクリーニングされるが，しばしば胎動に邪魔されて確認に時間がかかりすぎることがある．3次元超音波では，3次元データセットを使って胎動に邪魔されずに断面を確認していくことができるうえ，最近では自動的に流出路の含まれている断面を表示する機能も実用化されており，スクリーニングという意味で効率的に使える可能性がある．
4）何か気になるが異常かどうかの判断がつかない場合，妊婦健診時に時間をかけるよりは，3次元データセットを残しておいて後でゆっくり見直す，あるいは専門医にデータセットだけを送ってチェックしてもらうという使い方もある．
【妊婦健診使用時の注意】
　胎児の3次元像は被検者や家族にとって非常に魅力的なものであることから，いわゆるentertainment 的になりやすい．胎児への安全性が完全に解明されたわけではないため，必要以上に胎児に超音波を当て続けることは避けるよう注意すべきである．
参考文献
　1）馬場一憲，井尾裕子．産婦人科3次元超音波，メジカルビュー社（東京），2000
　2）馬場一憲. 3次元超音波の基礎と原理．竹内久彌，馬場一憲編集．マスター3次元超音波，P12-29, メジカルビュー社（東京）, 2001