Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション13
妊婦健診における超音波検査の再検討

(S243)

妊娠後期の超音波健診

Checkup using urtrasonography at the third trimester for detecting feto-placental dysfunction and complication during delivery

長谷川 潤一, 松岡 隆, 市塚 清健, 仲村 将光, 竹中 慎, 三村 貴志, 大槻 克文, 岡井 崇

Junichi HASEGAWA, Ryu MATSUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Masamitsu NAKAMURA, Shin TAKENAKA, Takashi MIMURA, Katsufumi OTSUKI, Takashi OKAI

昭和大学医学部産婦人科学教室

Department of obstetrics and gynecology, Showa university school of medicine

キーワード :

【目的】
妊娠中期までに超音波検査異常を認めなかった症例においても妊娠後期には,胎児発育やwell beingの評価と,分娩方針決定のためのリスク評価は重要である.その意味のスクリーニングとして妊娠後期の簡便かつ効率的な超音波健診法を検討する目的で以下の研究を行った.
【対象と方法】
(a)胎児発育評価1)妊娠25週以降の単胎1664例の分娩直前の推定児体重(EFW)と出生時体重(BW)の関連を調べた.2)妊娠37週以降に2200g未満で出生したFGR児27例のEFWの成長曲線を作成し,妊娠後期に表れるFGRを予測するのに適切な週数を検討した.(b)分娩リスク評価 1)妊娠37週以降の未破水,経腟分娩試行症例のうち,Amniotic pocket (AP)計測によって診断された羊水過少(AP<20mm)107例とcontrol 940例の分娩予後の違いを調べた.2)胎児死亡(IUFD)82例,緊急帝切136例の原因を調査し,分娩前にリスク評価をしておくべき異常を検討した.3)各臍帯異常の,超音波検査でハイリスクと診断する基準を検討した.
【結果と考察】(a)1)EFWとBWには相関を認めた(r=0.882, p<0.01).両者の乖離((EFW-BW)/BW)は,BWが2000g未満,2000-3000g,3000g以上でそれぞれ-0.8%,-0.4%,-5.0%*であった(p<0.01).2)対象としたFGR児のうち,妊娠20-25週,26-30週,31-35週,36週以降でのEFWが-1.5SD未満であったのは,19.0%,28.3%,34.0%,55.4%であった.EFWの回帰曲線の上昇速度は妊娠34週をピークに低下傾向を示した.尚,対象としたFGR症例の29.6%でNRFSによる緊急帝切が施行されていた.(b)1)羊水過少とcontrolにおける急速遂娩の頻度は19.6%,7.9%(p<0.01),緊急帝切は5.6%,2.5%であった.また,羊水過少症例の中にBW2200g以上の症例が102例(95.3%)あった.2)IUFD(0.3%; 82/24446)の原因は,臍帯異常48%(過捻転,複雑巻絡,卵膜付着,臍輪部狭窄),胎児異常20%,胎盤異常15%(早剥など)であり,緊急帝切(3.3%; 136/4163)の理由は,胎盤異常35%(早剥,前置胎盤など),臍帯異常21%(過捻転,卵膜付着,下垂脱出など),母体疾患13%(PIH,感染など),羊水過少9%,胎児異常(FGRなど)7%,原因不明のNRFS15.4%であった.3)卵膜付着:子宮下部1/3の卵膜付着,上中部の卵膜付着,正常胎盤の緊急帝切の頻度は,60%*,10%,4%であった(p<0.05).過捻転:捻転の超音波検査による評価(coiling index = 捻転1周期の長さの逆数)は分娩後の評価と相関し,超音波による過捻転(90%タイル)のカットオフ値は0.6であった.
【結論】
妊娠9ヶ月以降のEFWの計測と妊娠37週以降の羊水量測定は,「後期」超音波健診の必要項目と思われた.詳細な超音波健診によっても,現在の所,胎盤早期剥離,前置胎盤の出血,臍輪部狭窄,複雑な臍帯巻絡などにより,急激に発症するNRFSやIUFDは予測不能と思われるが,妊娠後期に胎児の発育とwell-beingの評価および付属物の異常の再評価を行っておくことは,分娩時のNRFS発症のリスク予測に役立つと考えられた.