Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション13
妊婦健診における超音波検査の再検討

(S242)

妊娠中期の超音波健診

Ultrasonographic screening at 2nd trimester

藤森 敬也

Keiya FUJIMORI

福島県立医科大学総合周産期母子医療センター

Obstetrics & Gynecology, Fukushima Medical University

キーワード :

わが国においては,妊娠初期から後期に至るまで,妊婦健診時に毎回,超音波検査が行われることが多い.その理由のひとつに,生まれてくるであろう児と母とのコミュニケーションということが挙げられるが,超音波検査の必要性の医学的意義については示されていない.実際,妊娠初期・中期・後期に,ルチーンの超音波検査は1度ずつでよいと考えられている.妊娠初期の超音波検診では,胎児致死的奇形の把握を目的にするのに対し,妊娠中期では,胎児構造異常の把握が中心となり,妊娠後期では,胎児成長や羊水量などの胎児well-beingの把握が目的となる.
胎児異常の超音波診断には大きく分けて,標準的検査 (Standard or Basic Examination)と専門的検査 (Specialized or detailed Examination)がある.標準的検査とはLow Risk群に対して,胎児計測を行いながら各臓器異常の検索を行うことである.一方,専門的検査とは,母体疾患やある特定の投薬を受けている場合,あるいは多因子遺伝と言われている疾患の出産歴や既往癧がある場合,それらに特徴的な胎児異常の存在に注意を払いながら行う超音波診断や,標準的検査によって胎児異常が疑われた場合の高次医療施設の超音波専門医による診断的検査を意味する.
標準的検査による胎児異常スクリーニングは,通常,胎児計測を行いながら行われる.まず,①大横径(Biparietal diameter; BPD)を計測し,大きさとともに,その形状,mid-line shiftの有無,脳室や小脳・大槽に異常がないかを確認する.②大腿骨長(Femur length; FL)を計測し,その長さとともに骨端の形状にも注意をする.③腹部周囲長を計測し,胃胞とその位置,腹壁,臍帯起始部の異常の有無を確認する.以上をもって胎児推定体重の計測が行われた後,羊水量に異常がないかを確認する.引き続き,胸部に移り,まず心臓・大血管をスクリーニングする.四腔断面(4-chamber view)を描出し,そのバランスとともに心軸(cardiac axis)が正常であるかを確認,引き続きそのまま超音波プローベを頭側に平行移動させ,大血管の走行を3-vessels viewとして確認する.その後,可能であれば右・左室の流出路としての肺動脈・大動脈の走行と,これらの血管が交叉していることを確認する.次に,腹部に移り,両側腎臓を確認した後,腹腔内に嚢胞性病変がないかを確認する.最後に,母親に示しながら顔面を描出し,口唇裂がないことを確認し,スクリーニングを終了する.
妊娠14週から28週の妊娠中期の超音波健診の目的は,心奇形や中枢神経系を中心とした胎児構造異常の把握である.本邦では,可能な限り妊娠22週までに行うことが望ましいと考えられている.また,21-トリソミーの把握を目的とした妊娠中期の超音波所見マーカーとして,大腿骨短縮(short femur)水腎症(hydronephrosis)心臓内高輝度点(intracardiac focus)高輝度消化管(Echogenic bowel)のようなものが指摘されている.これらの所見は異常ではなく超音波所見であり,正常胎児においてもある程度で認められるものの,複数の超音波所見マーカーが重なれば,21-トリソミーの頻度は増加していく.
我々の施設では,現在,妊娠初期に全妊婦に文書にて超音波診断施行の同意を頂いている.つまり,超音波診断にて胎児異常が判明した場合知りたいのかという点,さらに,超音波診断は完全な診断方法ではないため,出生後,新たに胎児異常が見つかる可能性があるという2点である.