中野 卓二¹, 橋本 千樹¹, 吉岡 健太郎¹, 川部 直人¹, 原田 雅生¹, 西川 徹², 東郷 洋子²

Takuji NAKANO¹, Senju HASHIMOTO¹, Kentaro YOSIOKA¹, Naoto KAWABE¹, Masao HARATA¹, Toru NSHIKAWA², Yoko TOGO²

¹藤田保健衛生大学 医学部肝胆膵内科, ²藤田保健衛生大学病院臨床検査部

¹Department of internal Medicine, Fujita Health University, School of Medicine, ²Department of Clinical Laboratory Medicine, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【目的】
膵疾患に対する造影超音波は膵腫瘍の血流からみた鑑別，膵癌の早期発見，自己免疫性膵炎の病勢評価などに有用であることが示されている．膵癌は乏血性の腫瘍として知られているが，造影エコーにて膵癌内部に点状や線状の染影が観察されることが報告されている．今回，当院にて膵充実性腫瘍に対してSonazoidを使用し造影超音波の有用性について検討したので報告する．
【対象】
2007年4月から2008年12月までにSonazoidによる造影超音波を施行した膵充実性腫瘍36例．男性15例，女性21例．平均年齢65.1歳．膵管癌　33例，Solid-pseudopapillary tumor　2例，腎癌膵転移1例．うち手術施行症例9例，EUS-FNA施行例10例
【方法】
当院の倫理委員会の承認を得て，また患者に十分説明し同意を得て施行．撮像装置はシーメンス社製Sequoia512とGE社製LOGIQ7を使用した．Focus pointは腫瘍下面として，撮像条件はそれぞれSequoia512でCadence Contrast Pulse Sequencing modeで送信周波数は1.5または2.0MHz，MI値は0.2から0.4，LOGIQ7でcoded phase inversion modeで送信周波数は2MHz，MI値は0.2から0.3で行った．Sonazoid投与量は0.005から0.010ml/kgを経静脈的に投与した．撮像条件は投与後60秒までを早期相として観察し，それ以降を後期相として観察した．
【結果】
膵管癌症例では膵実質と比べhypovascularではあるが，投与直後一瞬染影し，速やかに染影が低下する像が見られ，その後内部の染影パターンを観察できることが多かった．腫瘍内部の染影パターンとして，膵管癌33例中，染影を認めなかった症例は19例，腫瘍内部に点状染影を認めた症例は2例，腫瘍内部に線状染影を認めた症例は3例，腫瘍辺縁に線状染影を認めた症例は7例，腫瘍の中心に染影を認めたものが2例だった．腫瘍の中心に染影を認めた2例のうち1例は低分化腺癌であった．SPT症例では造影エコーでは投与直後に強い染影を認めるが，その後は速やかに染影が低下するのが観察された．腎癌膵転移症例では非常に強く染影された．
【考察】
膵充実性腫瘍に対して造影超音波は存在診断や腫瘍形態の評価に有用である．今後，膵管癌の造影超音波では腫瘍内部の染影パターンだけでなく，Time intensity curve（TIC）を用いた輝度解析なども合わせて評価をしていくことで，分化度を推測する一助になるではないかと期待される．Sonazoidを用いた造影超音波検査は膵充実性腫瘍の鑑別診断においてもその有用性は示唆されるところであり，今後も症例を重ねて検討していきたい．