内田 博起¹, 廣岡 芳樹², 後藤 秀実^{2, 3}

Hiroki UCHIDA¹, Yoshiki HIROOKA², Hidemi GOTO^{2, 3}

¹岡崎市民病院消化器科, ²名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部, ³名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学

¹Department of Gastroenterology, Okazaki City Hospital, ²Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital, ³Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
膵腫瘍の超音波診断は，B-modeの観察に加え，血行動態の評価によっても得られるが，Elastography（以下EG）では，B-mode画像や血行動態とは異なる新たな情報を造影剤の負荷無く提供できる．今回我々は膵腫瘍診断における腹部超音波EG（以下US-EG）及び超音波内視鏡EG（以下EUS-EG）の有用性について報告する．
1.US-EG
＜方法＞Preliminary study：正常膵ボランティア10例，膵癌5例，膵内分泌腫瘍2例，慢性膵炎5例，嚢胞性疾患（IPMN:intraductal papillary-mucinous neoplasm）14例を対象に，B-mode画像とEG-mode画像とを比較し，切除標本が得られた膵癌5例，膵内分泌腫瘍2例，慢性膵炎2例，IPMN5例に関して，その標本における画像所見について病理組織学的に比較検討した．Prospective study：対象はB-modeとUS-EGの両方で観察した病理組織学的に診断が確定した膵病変53例．検討項目は，US-EGの描出率とPreliminary studyで得た画像所見を診断基準として，B-mode単独とB-modeにUS-EGを付加した場合の正診率．超音波診断装置はEUB-8500（HITACHI），linear probe （EUP-L52，3.5-7.5MHz）を使用．＜結果＞Preliminary study：正常膵は均一に青い色調で帯状に描出された．膵癌では低エコー腫瘍に一致してUS-EGは硬い領域を示し，内部にやや軟な領域が点状に分布して示された．膵内分泌腫瘍では膵実質と同程度からやや硬い硬度で描出された．慢性膵炎では，膵実質は硬軟種々の色調が混在して描出された．IPMNでは嚢胞壁とその周囲膵実質には色調を認め，嚢胞内腔は，硬度を示す色調が描出されなかった．Prospective study：B-modeとEG-modeともに描出されたのは41例（77.4%，41/53）．そのうちB-mode単独の正診率は73.2% （30/41）．EG-modeを付加した正診率は97.6%（40/41）．各疾患の描出率は，膵癌60.0%（15/25），内分泌腫瘍100%（3/3），慢性膵炎92.0% （23/25）．各疾患の正診率は，膵癌100%，内分泌腫瘍100%（3/3），慢性膵炎95.7%（22/23）．＜結論＞US-EGは独自に組織の特性を提供でき，膵腫瘍の質的診断に有用である．
2.EUS-EG
＜方法＞Preliminary study：B-mode画像とEG-mode画像とを比較し，切除標本が得られた膵癌，膵内分泌腫瘍，慢性膵炎に関して，標本における画像所見について病理組織学的に比較検討した．また，腫瘍の脈管侵襲，リンパ節転移のEUS-EGの画像所見についても同様に検討した．Prospective study：Preliminary studyで得たEUS-EGの所見を診断基準として膵腫瘍と腫瘍の脈管侵襲，及びリンパ節転移のB-mode単独およびEUS-EGを付加した正診率について検討した．観測装置はEUB-8500，HV-900（HITACHI）．超音波内視鏡はEG-3630UR，EG-3670URK，EG-3780UTK（PENTAX）．＜結果＞Prospective study：EUS-EGでは，B-modeにEUS-EGを付加するとより高い正診率が得られた．＜結論＞EUS-EGは膵腫瘍の質的診断及び伸展度診断に有用である．