若杉 聡¹, 平田 信人¹, 江原 正明², 北浦 幸一², 山崎 智子², 小原 正巳², 小宮 雅明², 山村 和博²

Satoshi WAKASUGI¹, Nobuto HIRATA¹, Masaaki EBARA², Kouichi KITAURA², Tomoko YAMAZAKI², Masami KOHARA², Masaaki KOMIYA², Kazuhiro YAMAMURA²

¹亀田総合病院消化器内科, ²亀田総合病院超音波検査室

¹Department of Gastroenterology, Kameda Medical Center Hospital, ²Department of Ultrasonography, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵腫瘍の多くは予後不良で，予後向上のためには早期診断が望ましい．今回，我々は膵管癌症例を中心に膵癌の超音波検査所見を検討し，その問題点と可能性について検討した．
【対象と方法】
対象は2004年1月から2008年10月までに当院で膵管癌と画像診断された157例である．これらの病変の部位，大きさ，および間接所見について検討した．
【結果】
病変は頭部106例（68%），体部31例（20%），尾部20例（13%）であった．大きさはTS1；13例，TS2；80例，TS3；55例，TS4；9例であった．TS1症例は全例頭部に存在した．初回検査で腫瘍を指摘できなかった例は31例で，TS1；7例/13例（54%），TS2；13例/80例（16%），TS3；6例/55例（11%），TS4；5例/9例（56%）であった．頭部は19例/106例（18%），体部は7例/31例（23%），尾部5例/20例（25%）であった．腫瘍の指摘されない症例の画像を検討し，その原因について検討すると，1）病変が小さいため；1例，2）病変が観察しづらい部位に存在した；8例，3）周囲の腸管の癒着等で観察困難であった；11例，4）病変のコントラストが不良；7例，5）病変の認識不足；4例であった．間接所見を検討すると，総胆管拡張例は頭部で72例（68%），体尾部では0例であった．主膵管拡張例は頭部で62例（59%），体部で5例，尾部で1例であった．膵の菲薄化は頭部で38例（36%），体部で1例，尾部で0例であった．膵の低エコー化は頭部で29例（28%），体部で6例，尾部で0例であった．頭部病変106例で間接所見を検討すると，総胆管拡張はTS1；7例/13例（54%），TS2；41例/59例（70%），TS3；23例/29例（79%），TS4；1例/5例（20%）で認めた．主膵管拡張はTS1；6例/13例（45%），TS2；44例/59例（75%），TS3；19例/29例（65%），TS4；2例/5例（40%）で認めた．間接所見のない頭部症例は9例/106例（8.4%）で，TS1；3例/13例（23%），TS2；4例/59例（6.8%），TS3；0例/29例（0％），TS4；2例/5例（40％）であった．間接所見もなく，腫瘍の指摘も困難な頭部症例は4例（TS1；2例，TS2；1例，TS4；1例）であった．
【考察および結語】
膵管癌の60%以上が膵頭部に見られ，TS1症例は頭部のみであった．頭部病変は総胆管拡張などの間接所見を伴いやすいため，間接所見もふくめた頭部の観察の重要性が再認識された．しかし，間接所見のない症例も9例存在し，そのうち4例は腫瘍の指摘も困難で，他画像で診断された．体尾部病変はTS1症例がみられなかった．間接所見が少なく，胃のガスなどで観察困難なことが多いためと思われた．初回検査で腫瘍が指摘困難な膵癌は31例で，部位ごとに差はなかった．TS1で多く，TS2，TS3で少なかったが，TS4で腫瘍の指摘が困難な例がみられた．腫瘍が小さいため観察しづらい症例と，癒着等により観察困難な症例が存在するものと推察した．しかし，1例ごとに原因を検討すると，腫瘍が小さいため診断できない症例は少なく，病変の認識不足で診断されない例，観察しづらい部位に存在した例が多かった．さらに病変が存在する部位が観察できているのに周囲正常膵とのコントラストが悪く，指摘困難な症例も存在した．これらは他画像でも病変の指摘が困難で，診断に難渋した．注意すべきである．