Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション12
どこまで来た膵腫瘍の超音波診断

(S237)

膵腫瘍診断におけるVolume Dataの活用

Appliance of Volume Data Aquisition for the diagnosis of Pancreatic Neoplasma.

田中 幸子, 福田 順子, 高倉 玲奈, 高野 保名, 石田 哲士, 井岡 達也, 中泉 明彦, 吉岡 二三, 仲尾 美穂, 上田 絵里

Sachiko TANAKA, Junko FUKUDA, Rena TAKAKURA, Yasuna TAKANO, Tetsushi ISHIDA, Tatsuya IOKA, Akihiko NAKAIZUMI, Fumi YOSHIOKA, Miho NAKAO, Eri UEDA

大阪府立成人病センター検診部

Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer & CVD

キーワード :

目的:メカニカルスイープ方式のコンベックスプローブを用いたVolume Dataの膵腫瘍診断における有用性について検討する.
対象:対象は2007年12月から2008年11月までの1年間に膵限局性病変に対しメカニカルスイープ方式のコンベックスプローブを用いてVolume Dataの収録を行なった249例で,内訳は膵癌55例(うちIPMC由来浸潤癌8例),膵管内乳頭粘液癌(IPMC)6例,膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)155例,粘液性嚢胞腺腫(MCA)5例,膵内分泌腫瘍4例,漿液性嚢胞腺腫(SCA)7例,腫瘤形成性膵炎5例,仮性嚢胞5例,その他7例である.診断根拠は切除病理診断が35例,剖検2例,生検組織診が26例,ERCP膵液細胞診が111例で他の75例は画像診断と経過観察による.
方法:検査は半座位で背もたれの十分に高いベッドを使用,描出困難な尾部の病変については,350mlの液体(缶入りミルクティー)飲用後に収録した.使用装置はLOGIQ7, Mechanical Sweep 方式, 周波数2-5.5MHzのコンベックスプローブを用いた.病変部分を含む比較的狭い範囲にLOIおよびSweep角度を設定し,3-5秒間程度のSweep Scanで腫瘤全域を含むVolume Dataを収録した.長径15mm以上の嚢胞90病変については,検査終了後に嚢胞内腔面を表示するVirtual Cystoscopic Imageを作成した.
充実性低エコー像や嚢胞内結節の存在など膵悪性疾患が疑われた症例および,肝に限局性病変の存在した症例の計121例については,文書による同意の上,転移性肝癌の存在診断あるいは,肝腫瘍の鑑別診断の目的でソナゾイド造影超音波検査を行ない,膵病変についても造影画像のVolume Dataを収録した.膵の造影検査は造影剤投与約10秒後より,上記のSweep Scanを数回繰り返し収録した.また,腫瘤の造影画像の収録後,腫瘤近傍の大血管を含めた範囲を高音圧でSweep Scanし,腫瘍近傍の大血管への浸潤の有無についても検討した.
結果:
1. Volume Dataの連続断面画像としての活用
一定の方向で連続的に撮像された収録画像をコマ送りで読影することにより,限局性病変と主膵管や周囲血管との位置関係を詳細に観察でき,またそれらの情報を客観的に伝達することが可能であった.
2. Virtual Cystoscopic Image
Blind ReaderによるIPMN67例の読影で,Virtual Cystoscopic Image を追加することにより,嚢胞内結節の存在診断能が感度,特異度ともに有意に向上した.
3. 造影3D画像
ソナゾイド造影を追加することにより,嚢胞内のデブリと結節の区別が可能となった.主膵管像および充実性病変,嚢胞内結節像の輪郭が明瞭に描出された,限局性病変と主膵管との関連もより明瞭となり鑑別診断に有用であった.また,高音圧画像でCA,SPA,CHA,SMA,SMVへの浸潤の有無を検討した結果,同時期に行なった造影MDCTとよく相関する成績が得られStage診断に有用と考えられた.
考察:超音波ではCTやMRIのように全身を1画面に表示することは困難であるが,Mechanical Sweep方式のプローブをもちいることにより,病変局所の情報については,正確な位置情報に基づく詳細な3次元画像を提供することが可能であり,超音波診断法の客観性に対する信頼性を高くできる可能性があると考える.