Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
超音波で加齢を計る

(S231)

大動脈弁の加齢変化;心エコー図法による評価

Aging Changes in the Aortic Valves; Echocardiographic studies.

石塚 尚子

Naoko ISHIZUKA

東京女子医科大学循環器内科

Department of Cardiology, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

加齢による大動脈弁の変化について心エコー図法を用いて評価した.
1) 大動脈弁血流速度の軽度加速は年齢によってどの程度の頻度で認めるか.2) 大動脈弁の弁輪径とValsalva径,STJ径,上行大動脈径を計測し,年代別にそれぞれの比率を算出することにより,加齢による大動脈弁基部のremodelingについて検討した.
1) 2008年1月から12月の間に外来で行なわれたルチン検査は8251件(男性;4779,女性;3472)あり,そのうち年齢を20代から90代の8群に分け,各年代の中で大動脈弁の流速が2.0〜3.0m/secの加速症例がどのくらいの頻度であるかを調べた.男性;女性別に20代2.2%:2.4%,30代1.6%:3.8%,40代3.7%:4.9%,50代7.1%:6.6%,60代7.4%:12.3%,70代7.6%:14.4%,80代9.5%:20.1%,90代21%:22.7%であった.加齢に伴い大動脈弁の流速2.0〜3.0m/secの割合は増加し,特に女性の方がその割合が高いことが明らかとなった.大動脈弁血流の軽度加速群は大動脈弁狭窄症予備軍と考えられる.同一症例の長期に渡るさらなる経過観察が必要である.
2) 経食道心エコー検査を施行した267例の大動脈弁輪径(ED,ES),Valsalva径,STJ径,上行大動脈径(Ao)を測定し,ES/Valsalva比,Valsalva/STJ比,Valsalva/Ao比の比を年代別,男女別に検討した.ES/Valsalva比とValsalva/Ao比は加齢とともに減少するが,Valsalva/STJ比は有意な傾向は認めなかった.このことから,弁輪に比しValsalva径は加齢に伴い拡大傾向を示すのに対し,Valsalva径の拡大に伴ない,STJも同じ程度に拡大するため,Valsalva/STJ比は有意な傾向を示さなかった.
加齢により弁そのものの硬化性病変の進行と,大動脈弁を含む大動脈基部のremodelingが生じ,そこに高血圧や高脂血症,CKDなどの修飾要因も加わり,老年期の大動脈疾患の各種の病態が形成される.心エコー図検査は,心機能や弁病態,形態変化などの評価に有用な診断法である.