Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
超音波で加齢を計る

(S230)

頸動脈血流から見た加齢

Carotid blood flow wave form changes with aging

藤代 健太郎

Kentaro FUJISHIRO

東邦大学医学部医学科教育開発室

Faculty of Med, Dept. of Med, Office of Educational Development, Toho University

キーワード :

総頸動脈血流速度は超音波ドプラを用いて計測し,収縮期の最高流速度2m/秒以上ならば70%の高度狭窄あり,また拡張期血流速度の左右差が1.4以上なら内頸動脈の閉塞を疑うと診断に利用している.また従来から末梢の変化を知るためにpulsatility index(PI)なども利用されているが,いずれもスペクトラル表示されたもので判断している.総頸動脈血流量波形は,加齢に伴い大きく変化する.超音波定量的血流量測定装置(QFM)では,血流と超音波ビームの角度依存性を排除した定量的計測が可能である.流速をゼロクロス法で求め,血管径を同時計測し,波形加算することで流量波形を求めている.得られた総頸動脈血流量波形は,収縮期にピークを示し拡張期は平坦である.波形は加齢に伴い,収縮期第1峰のピークが低くなり,第2峰が増高する.このため第1峰と第2峰の比率からおおよその年齢を推定出来る.30歳代,50歳代と60歳代の波形を比較すると,30歳代の総頸動脈血流量波形は,収縮期第1峰が急峻に立ち上がり,続く第2峰は低いので収縮期のピークは尖鋭である.50歳代では収縮期第2峰が高くなり,60歳代ではさらに第2峰が増高し,第1峰が低下することと合わせて,第1峰と第2峰の高さはほぼ同等になる.年代間で有意差を認めるのは波形の収縮期第1峰の高さと,第1峰から第2峰までの最大変化率である.生前に総頸動脈血流量波形を計測できた例で,剖検時の病理的所見との比較を行った.総頸動脈から内頸動脈を5カ所,脳底動脈の内頸動脈系5カ所の最大狭窄部位の狭窄度を4段階に分類し,25から49%の狭窄部位の数と波形の変化を比較したところ,総頸動脈血流量波形の収縮期第1峰から第2峰の変化は,内頸動脈遠位部から前大脳動脈および中大脳動脈の軽度硬化性変化を反映していると考えられた.総頸動脈血流量波形には内頸動脈と外頸動脈両方の情報が含まれているとはいえ,内頸動脈から頭蓋内動脈の硬化性変化に関連することから,総頸動脈波形情報から加齢の程度を推測することは出来ると考える.