Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
超音波で加齢を計る

(S229)

小児における血流依存性血管拡張反応

Percent Flow-Mediated Dilatation in Children

森 保彦1, 片山 博視2, 高谷 竜三1, 奥村 謙一1, 玉井 浩1

Yasuhiko MORI1, Hiroshi KATAYAMA2, Ryuzou TAKAYA1, Kenichi OKUMURA1, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学附属病院小児科学教室, 2片山医院小児科

1Pediatrics, Osaka Medical Colledge, 2Pediatrics, Dr. Katayama’s office

キーワード :

(目的)
基礎疾患のない小児において,心筋梗塞,脳梗塞などの動脈硬化性病変を起こすことは極めて稀である.しかし,肥満児や川崎病罹患児などでは,すでに小児期において血管障害が始まっていると様々な報告がなされている.今回我々は,基礎疾患を認めない小児及び若年者,単純肥満児及び川崎病遠隔期の小児の血管内皮機能の測定を行い,年齢や生化学検査などとの関係について比較検討を行った.
(対象)
1)基礎疾患を認めない児40名(男児23名,女児17名:年齢4〜13歳,9.4±3.3歳)
2)肥満検診を受けた肥満度20%以上の単純肥満児94名(男児55名,女児39名:年齢6歳〜15歳,平均男児10.3歳,女児10.1歳)
3)川崎病既往児67名(男児 36名 ,女児 31名:年齢:6〜15歳,9.7±2.5歳,発症からの期間:7.5±2.4年,川崎病罹患後1ヶ月時に冠動脈病変を有した症例10例(冠動脈狭窄 1例,冠動脈拡大病変 5例,退縮 4例),冠動脈病変なし57例)
(方法)
1) 血管内皮機能は %flow mediated dilatation (%FMD)にて評価し,比較検討した.
2)肥満児について,各種身体計測および身体組成評価,生化学検査,アディポサイトカインの測定を行い,%FMDとの関係について検討した.
3)川崎病罹患児について,有熱期間や生化学検査,冠動脈病変の有無などと,%FMDとの関係について検討した.
(結果)
1)基礎疾患を認めない児の%FMDは12.8±3.4%(男児:12.2±3.4%,女児:13.6±3.4%)であり,成人の基準値に比べ高い傾向にあった.しかし,男女共に年齢との相関はなかった.
2)①肥満児は基礎疾患を認めない児に比べ,男女共に%FMDは低い傾向にあった(男児:8.0±3.7%,女児:7.3±1.8%,P<0.01).②肥満児の%FMDは男児では年齢と負の相関を認めたが女児では相関しなかった.③%FMDは体脂肪量と負の相関がみられ,身体計測値の中で特に腹囲との関係が強かった(男児;r=-0.387,女児;r=-0.471).④%FMDは男児では尿酸値と負の相関(r=-0.421,p=0.001)を認めたが,女児では傾向を認めるのみであった (p=0.052).⑤アディポサイトカインのうちPAI-1(男児r=-0.374,女児r=-0.314),レプチン(男児;r=-0.288,女児;r=-0.255)は,%FMDと負の相関関係がみられた.
3)①川崎病罹患児では,冠動脈瘤の有無に関わらず,基礎疾患を認めない児に比べ,%FMDは低い傾向にあった(川崎病罹患児:9.8 ± 3.6%, 冠動脈病変なし:10.4 ± 3.3 %,p<0.05).②10日以上発熱のあった患児は有意に%FMDが低い傾向にあった.
(考察)
単純肥満は生化学的合併症の有無に関わらず,若年期より血管内皮機能に影響を与えていた.また川崎病罹患児では,冠動脈病変を認めない児においても血管内皮機能の低下している症例が見られた.単純肥満において男児では年長児ほど,血管内皮機能が低下している傾向にあったが,女児においてはその傾向は無かった.二次性徴の有無や尿酸などが影響している可能性がある.
(結論)
基礎疾患のある児では加齢に伴い,血管内皮機能が低下している傾向にあるが,性別や二次性徴の有無などを考慮する必要がある.