Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
超音波で加齢を計る

(S229)

IMTから見た血管の加齢

Vascular aging evaluated by intima-media thickness

大石 充, 樂木 宏実

Mitsuru OHISHI, Hiromi RAKUGI

大阪大学老年・腎臓内科学

Department of Geriatric Medicine, Osaka University

キーワード :

「A man is as old as his arteries (人は血管と共に老いる)」という言葉は高名な医師であるWilliam Osler教授の残した名言である.動脈の構造変化(remodeling)は量的変化(内膜肥厚や中膜の菲薄化),質的変化(粥腫性プラークや石灰化)および機能的変化(内皮反応性やarterial stiffness)という様々な変化がモザイクのように絡み合って形成されている.Remodelingにおけるこれらの要素のうち,1)何が加齢に関連しているのか?,2)各々の変化が起こる機序は何か?,3)各々の要素の相互作用は?,といった命題に対する明確な答えは未だにないのが現状である.多くの検討から脈波伝搬速度(pulse wave velocity; PWV)により測定されたarterial stiffnessが年齢と非常に強い相関があり「血管年齢」という言葉で表そうという動きがある.一方,高血圧患者を対象とした我々の検討や一般住民を対象とした検討においても,頸動脈エコーで測定される内膜-中膜厚(intima-media thickness; IMT)が年齢と強い相関を示し,PWVとも相関を示すことが示されている.また頸動脈エコーはプラーク形成といった形状変化も測定できる.大阪大学脳卒中科によるプラークスコアが臨床応用されているが,我々のデータにおいてもIMTのみならずプラークスコアも年齢との正相関が認められている.
頸動脈エコーのもう一つの利点は組織性状を測定しうることである.我々は剖検例を元に超音波の後方散乱波信号(integrated backscatter)と病理所見とを対比させて,正常組織・粥腫性プラーク(不安定プラーク)・線維硬化性プラーク(安定プラーク)を診断する方法を開発した.これにより頸動脈の組織性状診断を行ったところ,高リスク患者さんは不安定プラーク頻度が高いのに対し,低リスク高齢者では安定プラークの頻度が圧倒的に高いことが示された.またIMTとこのプラーク性状との間に強い関連性は認めなかった.このことによりIMTの量的計測だけでなく質的計測も重要であることが示唆された.
我々はさらに高血圧患者を対象としたコホート研究(NOAH study)も行っている.本ワークショップでは上記のようなIMTや頸動脈エコーの有用性と予後との関連性およびIMTから見たVascular agingについて言及ししたい.