Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション9
臨床医が求める検査報告書の書き方

(S227)

超音波検査報告書作成時の問題点・注意点について

Problem of making a ultrasound report

尾本 きよか1, 谷口 信行2

Kiyoka OMOTO1, Nobuyuki TANIGUCHI2

1自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第一講座(臨床検査部), 2自治医科大学臨床検査医学

11st Dept. of Integrated Medicine, Laboratory Medicine, Saitama Medical Center, Jichi Medical University, 2Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University

キーワード :

 時代の趨勢とともに,検査室における超音波検査士の役割は明らかに増してきている.実際,超音波検査の実施,画像の保存,レポート作成などの大部分は超音波検査士の通常の業務として行われてきている.また検査依頼内容・項目の多様化とそれにともなう様々な記録様式・媒体の出現で,その業務内容はさらに複雑化してきており,超音波検査士の負担が重くなってきているのが現状である.
 ところで,超音波検査報告書(レポート)は,通常「所見」と「診断名」を記載する構成になっている.「所見欄」とは,臓器や病変を観察した結果,その形状,形態的特徴などに関してその検者の意見や考えを,超音波用語1)〜3)用いて表現・記載するところであり,検査した超音波検査士(あるいは医師)が書き込むことになっている.一方,「診断名」にはこの「所見」をもとに推測される疾患名や病態を具体的に診断し,記載する必要があり,一種の医療行為として医師が担当しなければならない.このように役割分担が明確であれば問題にはならないが,所見欄に疾患名のような用語を書き込んでしまっているレポートに遭遇することがある.この場合,見解によっては医療行為とみなされる可能性もあり,十分注意する必要があろう.
 “超音波診断装置の使用に関する社団法人 日本超音波医学会の見解”(平成14年9月)の中では,「ヒトに対して医療上の業務に超音波検査ができるのは,医師,臨床検査技師,診療放射線技師および看護師・准看護師の業務として法的に認められている業種に限定される」としており,また“臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律”4)の中では,臨床検査技師は「医師の指示の下に」超音波検査を行うとしており,さらに「検査の正確性及び検査を受ける者の安全を確保するため,できる限り医師の具体的な指示を直接受けて行なわれるよう努めること」とも記載されている.医療行為としての安全性や,超音波検査の正確性について改めて喚起を促す見解や法律であり,順守しなければならない.しかしながら超音波検査士が具体的にどの範囲,どの領域まで検査し,どのような内容の報告書まで作成していいのか一切触れられていない.そのため先述のようなことが起きることも想定され,速やかに検討していかなければならない課題と思われる.
 これら超音波検査報告書の抱える問題点について,法律的側面や多数の事例などから考察し,超音波検査士や担当医師はどのような立場・役割で,今後どのように対応していけばよいかを考えていきたい.

1)医用超音波用語集;社団法人 日本超音波医学会編
2)新超音波医学第4巻;社団法人 日本超音波医学会編
3)社団法人 日本超音波医学会 ホームページ 「用語・診断基準」
4)「臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律」の一部を改正する法律案(平成17年4月22日)