Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション9
臨床医が求める検査報告書の書き方

(S226)

臨床医が求める検査報告書の書き方

How to write a report for a doctor.

白井 秀明

Hideaki SHIRAI

札幌ことに乳腺クリニック検査部

Department of examination, Sapporo Kotoni Breast Clinic

キーワード :

〔はじめに〕現在超音波検査は広く普及し,そこで要求される内容も多岐にわたっており,乳腺超音波検査も検診施設におけるスクリーニング検査から専門施設における治療効果判定や経過観察など,その簡便性からさまざまな領域に取り入れられ,数多く施行されている.検査者は主に医師の他,臨床検査技師や診療放射線技師が担当し,一部の分野では看護師も施行している.このように多くの医療従事者が超音波検査に携わるものの,その検査手技や検査結果報告などに一定の基準がないのが現状である.そのため検査の報告形態は様々で,報告書がなく超音波画像のサーマルプリントのみを提出している施設から,手書きのシェーマなどを加えた詳細な報告を行う施設まで,同一検査でありながらその様式に大きな差がみられる.報告書はその時点での臨床所見として重要であるばかりではなく,後の経過にとっても必要となることより要求に合ったものでなければならない.特に現在我々が用いている超音波診断装置はリアルタイムのものが基本であり,探触子を持ち検査を施行したものが多くの情報を知ることとなる.そのため,検査者はその情報を過不足なく依頼医に伝えることが重要であり,乳腺領域においてどのように行っているか当院での現状を報告する.
当院は乳腺の専門施設として乳癌検診の精査から乳腺疾患治療に関わる検査まで,その目的により求められる内容も異なる.
1)検診による精査
指摘された病変の良悪の鑑別が目的であるため,まずその存在を確認した後に,腫瘤の性状については主に日超医の乳腺疾患超音波診断ガイドラインを用いて分類し,報告書に記載している.但しガイドラインの項目のみでは,必ずしも良悪の判定に導けるものは多くなく,後方エコーや内部エコーなどによって組織性状を推定し,そこから導き出される推定組織型を結果とする場合が多い.この時に重要なのが,いわゆる動画によるリアルタイムの情報である.乳腺腫瘤などの病変部は立体であることより,一断面によってその特徴を表現することは必ずしも容易ではない.そこで検査者が動画所見によって得られた情報を加味することにより,判定項目では表現しきれなかったものにそれぞれ重みづけを盛り込むことで,より正しい結果が導き出せるものと考えている.つまり超音波検査の結果は,検者が何を考えて画像を提出したのかを依頼医に伝えるため,推定組織型を記載することで,より診断が導きやすくなるものと考える.
2)治療
①外科的治療
この場合最も重要なのは,乳管内進展範囲などの病変部の広がりを可能な限り正しく伝えることと共に,腫瘤の周囲に対する浸潤形態の把握や,リンパ節転移の有無など術式選択に役立つ情報を報告することである.
②薬物療法
主に治療効果判定が目的であるため,前回の腫瘤径との比較や内部構造の変化を記載するよう心がけている.この場合においても,病変の薬物に対する感受性は異なり,たとえサイズの変化がなくとも,性状の変化などを前回と比較して捉えるためには,リアルタイムによる情報が不可欠である.したがって,こういった判定情報を必ず記載するようにしている.
〔まとめ〕超音波検査を行う者にとって,いずれの場合にも重要なのは,共通の所見用語を使用することで常に依頼医と同じ問題意識をもって検査にあたり,必要とされている情報に対して的確に応えられるよう心がけることが重要と考える.