Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション8
血流計測法の新展開

(S222)

超音波FMCWドプラ計測システムの基礎検討

Feasibility Study of Ultrasound FMCW Doppler Measurement System

国田 正徳, 須藤 政光, 井上 真也, 赤羽 睦弘

Masanori KUNITA, Masamitsu SUDO, Shinya INOUE, Mutsuhiro AKAHANE

アロカ株式会社研究所

Reseach Laboratory, Aloka CO.,LTD.

キーワード :

【はじめに】
FMCW超音波ドプラ計測システムは尖頭値電力が小さく,クラッタ相対電力の低減が可能である〔1〕,〔2〕.本論文では,特定した距離からのドプラ信号を,CWドプラと同等の感度で測定できる血流計測システムの構築を目的とし,新たな信号処理方式を提案する.
【速度計測の原理】
本方式では,正弦波で周波数変調した超音波FMCW信号を送受信する.送受信波形と周波数スペクトラムを図1に示す.送信信号は,周波数変調された連続波である.受信部では,受信信号と,目標までの往復の伝搬時間(τ)だけ遅延させた参照波と乗算し,両者の相関をとる.この処理により,広帯域に分布していたドプラ信号が,ベースバンド帯域に圧縮変換される.図2は,深さdに目標がある場合,ドプラ信号が体表からの深さによって変化する様子を描いたものである.図2に示すように,ドプラ周波数スペクトラムは目標の位置で最大となり,その高調波成分はすべて消滅するという特長がある.目標からのドプラ信号には,搬送波帯と同等の電力が保存されているので,CWドプラと同等のSNRを得ることができる.また,PWドプラのようなサンプリング処理が存在しないので,高速血流速度計測への応用も期待できる.
【実験結果】
計測原理を検証する目的で,超音波による実験を行った.水中の糸ファントムを目標とし,ドプラ電力を測定した結果を図2に示す.ドプラ電力は,受信波と参照波が一致した位相で最大となり,変調度が増加するにつれて,位相依存性がシャープになる.この傾向は,変調度を大きく設定すると,位置選択性がPWドプラと同等の特性に近づくことを意味するものである.
【結論】
特定した距離のドプラ信号を,CWドプラと同等の感度で検出できるFMCW信号処理方式を提案し,実験によりその妥当性を検証した.
【参考文献】
〔1〕国田,野田:超音波FMCWドップラー計測システムによるクラッタ低減効果,信学誌,vol.J87-A,no.10,Oct.2004.
〔2〕国田,三木,荒井:超音波FMCWドップラー計測システムの信号処理とその特性,信学誌,vol.J90-A,no.7,July.2007.