Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション7
急を要する甲状腺疾患 −この画像を見たら急いで!!! −

(S218)

急を要する甲状腺疾患この画像を見たら急いで!!!−未分化癌−

Examination of anaplastic carcinoma as thyroid disease that should diagnose in emergency by ultrasonography

鈴木 眞一

Shinichi SUZUKI

福島県立医科大学乳腺・内分泌・甲状腺外科

Dept. of Breast Endocrine Thyroid Surgery, Fukushima Medical University

キーワード :

甲状腺癌の大半をしめる分化癌(WDTC)はきわめて予後良好で,緩徐な進行であることが多い.それに対して未分化癌(ATC)は,頻度こそ数%と少ないものの,平均生存期間が6ヶ月ときわめて予後不良である.従って,腫瘍倍加時間も短く,突然急激な増大を示す.根治手術が不能な場合が多く,他の集学的治療も奏効率が低いとされている.まれに根治手術が可能であったものに長期生存が望まれるのが現状である.従って,頸部超音波診断を行うに当たり,ATCを出来るだけ速やかに診断し,根治手術を可能にすることが重要といえる.
ATCには通常のWDTCから急に変化する,いわゆる未分化転化例と最初からATCを発症するde novo typeがある.
ATCを疑う所見は下記の通りである.
1)急激増大例
2)粗大石灰化,Eggshell calcificationなど長期のWDTCや甲状腺腫用の存在を
3)内部エコーの不均質
4)びまん性低エコー像
5)周囲臓器への浸潤
6)転移リンパ節の壊死
7)ドプラでの血流増加と低下部分の混在
鑑別診断としては,甲状腺悪性リンパ腫(TML),腺腫様甲状腺腫(AG),橋本病(HD)などである.TMLもATCと臨床症状がほぼ同じであるが,頸部の石灰化は認めない.また,急激な増大としては,AGでの嚢胞部分が急激増大した場合にも認められる.しかし,解像度のよくないエコーでは低エコー所見を嚢胞と判断し放置されることがあり,穿刺で確認するだけでなく,エコーゲインをあげて内部エコーを確かめたり,ドプラエコーでの血流の有無で確認することが重要である.HDも巨大甲状腺腫や著明低エコー像でATCやTMLとの鑑別を要することがある.
 ATC,TMLは早急に診断を確定し,治療に入る必要がある.その点でも超音波診断は重要であるが,さらにエコー下で穿刺吸引細胞診(FNAC)を施行したり,太針生検(CNB)をする際,エコーガイドでの検査が重要となる.ATCは特に壊死部が多く,穿刺してもなかなか病理診断が着かないことが多く,低エコー部分でかつドプラエコーで血流の豊富なところを選んで穿刺することで早急な対処が可能になる.50歳未満にでのATCはまれであることも重要である.
 以上,頸部超音波検査を行うものとして,ATCは急いで診断すべきであり,FNACやCNBまで一気に出来るようにすべきと思われる.