Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション5
各領域の造影超音波の新展開

(S212)

造影ハーモニックEUS検査

Contrast-enhanced harmonic EUS

北野 雅之, 鎌田 研, 坂本 洋城, 小牧 孝充, 工藤 正俊

Maayuki KITANO, Ken KAMATA, Hiroki SAKAMOTO, Takamitsu KOMAKI, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

【目的】
超音波内視鏡(EUS)は他の画像診断と比較すると空間分解能に優れているため,消化器系疾患,特に小病変の診断に有用である.しかしながら,超小型探触子を使用することから周波数帯域が限られ,Levosistを用いた場合,共振,破壊させるだけの音圧が得られないために,造影ハーモニックイメージングが困難であった.第二世代超音波造影剤Sonazoidは低音圧で二次性高調波を発生することから,低音圧を使用するEUSに有用であると考えられる.我々は,胆膵疾患および消化管壁内外の病変診断において造影ハーモニックに対応した広帯域探触子を搭載したEUS装置を開発し,その臨床的有用性を検討した.
【方法】
胆・膵疾患が疑われた341例,消化管粘膜下腫瘍29例および腹腔内リンパ節腫大22例,計392例を対象に,造影ハーモニック対応のプロトタイプEUS装置を用いて造影ハーモニックEUS検査(CH-EUS)を行った.CH-EUSは,ExPHDモード(二次性高調波とPhase shiftから得られる信号の合成,送信周波数3.6-5.4 MHz,MI=0.3)を用いて,Sonazoid 15μl/kgを静脈内投与後,リアルタイムで観察した.外科切除あるいはEUS-FNA等による生検で病理診断が可能であった174症例において,CH-EUSによる造影パターンと病理診断を対比し,CH-EUSによる診断能を評価した.
【成績】
正常膵におけるCH-EUSでは,Sonazoid投与20±3秒後に輝度変化率が最高に達し,膵実質が均一に染影された.90秒後でも最高輝度変化率の62±8%の輝度変化率が確認され,膵実質像は4分間以上観察可能であった.MDCTでは描出不能であったTS1膵癌2例,IPMN(壁在結節)4例,内分泌腫瘍1例がCH-EUSにより描出可能であり,CH-EUSによる膵腫瘍描出の感度(96 %)は,MDCT(89 %)と比較すると有意に高値であった.また,CH-EUS(98 %)およびMDCT(97 %)による特異度は,B-EUS(84 %)と比較すると有意に高値であった.全ての通常型膵癌において腫瘍内血流が認められたが,その91%(93/97例)が周辺膵実質と比較するとhypovascularで内部の血流分布が不均一であり,一部に正常膵では存在しない緩徐な血流が観察された.また,B-EUSにおいて低エコー充実性病変として認められた炎症性腫瘤(14例)および脂肪壊死巣(6例)がCH-EUSによりそれぞれisovascularおよびavascularとして描出され,通常型膵癌(hypovascular)とは異なった造影パターンを呈した.胆泥6例では血流信号が全く観察されなかったのに対して,胆嚢癌6例,胆管癌3例では強い染影,胆嚢ポリープ5例では均一に分布した点状信号が観察された.また,胆嚢腺筋腫症では強い染影が観察されたが,内部にRASと思われるperfusion defectが明瞭に描出された.GISTおよび平滑筋腫8例のうち7例において,樹枝状に分布する血流信号が認められた.良性反応性リンパ節腫大5例では均一に分布する血流信号が認められたが,転移性リンパ節腫大10例中9例では内部血流が乏しく不均一な染影が観察された.一方,悪性リンパ腫では内部に強い血流信号が認められた.
【結論】
Sonazoidを用いたCH-EUS検査は,微小循環動態およびperfusion imageの評価により病変の内部構造を明瞭に描出することが可能であり,胆膵,消化管および周辺組織の小病変の存在および鑑別診断に重要な役割を担うと考えられる.