Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション5
各領域の造影超音波の新展開

(S211)

非アルコール性脂肪性肝炎の病態と造影超音波検査による臨床経過の評価について

Evaluation of Clinical Course in Non-Alcoholic Steatohepatitis Patients with Kupffer Phase Levovist Contrast Imaging

齋藤 正紀1, 飯島 尋子1, 2, 東浦 晶子2, 吉川 昌平1, 田中 弘教1, 2, 工藤 篤3, 前山 史朗4, 有井 滋樹3, 西口 修平1

Masaki SAITO1, Hiroko IIJIMA1, 2, Akiko HIGASHIURA2, Syohei YOSHIKAWA1, Hironori TANAKA1, 2, Atsusi KUDO3, Shiro MEYAMA4, Shigeki ARII3, Shuhei NISHIGUCHI1

1兵庫医科大学肝胆膵内科, 2兵庫医科大学超音波センター, 3東京医科歯科大学肝胆膵外科, 4北柏リハビリテーション病院内科

1Division of hepatobiliary and pancreatic disease, Hyogo college of medicine, 2Ultrasound center, Hyogo college of medicine, 3Department of hepato-biliary-pancreatic surgery, Tokyo medical and dental university, 4Internal medicine, Kitakashiwa rehabilitation hospital

キーワード :

【目的】
 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の約5〜10%に存在するといわれている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は進行すると肝硬変に至り,その鑑別診断は重要で肝生検がGold standardである.我々はこれまでNASH患者にLevovist造影超音波検査を行い,投与後20分のKupffer phaseで,脂肪肝(FL)と比較して肝実質染影の低下を認め,その診断学的有用性を報告してきた.さらにNASHラットモデルを用いた検討で,Normalラットと比較してKupffer細胞による造影剤の貪食機能の低下を認めることを示した.今回我々は,生体顕微鏡を用いて経時的にKupffer細胞の貪食能を評価するとともにNASH患者での臨床経過や治療効果判定に造影超音波検査が有用であるか検討を行った.
【対象・方法】
 Levovist造影超音波検査を施行したNAFLD症例を対象とし,組織学的に診断されたNASH38症例,肝生検未施行でLevovist造影超音波検査によるNASH疑い20症例,それらを除外した脂肪肝(FL)118症例を検討した.Levovist 1.25gをbolus静注後1,5,20分に肝臓の1断面をscanし,off-lineで20ヶ所以上ROIを設定,肝実質輝度を測定しその平均値を用いた.使用機器は,東芝Aplioを使用した.血液生化学検査よりALT値が診断時より10% 以上低下している群をALT改善群,それ以外をALT非改善群として,造影超音波検査における輝度を比較した.生体顕微鏡を用いた検討では類洞内を経時的に観察しKupffer細胞によるSonazoidの貪食能をNormalラットと比較検討した.
【結果】
 対象患者の追跡観察期間は最短5ヶ月,最長1年3ヶ月で,診断時の年齢(NASH,NASH疑い,FL;49.2±15.7,46.7±17.7,57.3±14.1:p<0.05),BMI(28.3±4.6,28.2±6.8,24.6±3.9:p<0.001),ALT(87.1±56.2,64.3±33.7,57.2±108.5:ns)であった.NASHおよびNASH疑い症例でALT改善群(診断時,治療後;70.6±50.6,33.9±21.0:ns)はLevovist造影剤投与20分後の輝度の回復(19.3±15.2,67.3±49.3:p<0.05)を認めたが,ALT非改善群(80.0±79.9,74.5±71.9:ns)は輝度の回復(46.8±21.9,30.5±29.9:ns)を認めなかった.また,FL症例ではALT値の変化と輝度との間に相関を認めなかった.生体顕微鏡による観察ではNASHモデルラットはNormalラットと比較してKupffer細胞に貪食されている造影剤の数は投与早期から低下していた.
【考察】
 今回の検討にて,1.Levovist造影超音波検査によるNASH診断症例は組織学的に診断されたNASH症例と同様の結果を得た.2.NASH患者におけるALTの改善症例はLevovist造影剤投与20分後の輝度の回復を認めた.3.生体顕微鏡の観察より造影超音波の輝度はKupffer細胞の貪食機能を反映しており,肝機能の改善に伴いKupffer細胞の機能は回復することが示唆された.
【総括】
NASHにおけるKupffer細胞の機能低下は可逆性であり,Levovist投与20分後の造影超音波検査はその臨床経過の評価に有用である.