江本 精

Makoto EMOTO

福岡大学医学部産婦人科

Associate Professor, Department of Obstetrics and Gynecology, Fukuoka University Medical School

キーワード :

目的:造影超音波による腫瘍血管新生の評価が，腫瘍の良悪性診断において有用であるかどうか子宮体部腫瘍の患者を対象に臨床的に検討した．基礎研究においては，造影超音波が血管新生抑制の評価に有用であるかどうか子宮肉腫株を用いてin vivoにて検討した．更に，新しい癌治療である血管新生抑制とメトロノミック化学療法の評価を造影超音波法で行った．
方法:1）臨床的には婦人科領域に使用が可能な第1世代の超音波造影剤であるレボビストを用いた．2）基礎研究ではマウス移植腫瘍に対してレボビストとオプチゾン，更に第2世代のソナゾイドを用い癌血管新生抑制の評価をin vivoで行った．同移植腫瘍に対する超音波治療の有用性も造影超音波にて同様に検討した．
結果:1）臨床的には悪性である子宮肉腫は良性の子宮筋腫と比較して，著明な腫瘍内血流像が認められ，子宮腫瘍の良悪性診断における造影超音波の有用性が示唆された．また，微小な卵巣癌の早期発見に同法が有用であった貴重な症例も認められた．2）基礎研究では血管新生阻害剤TNP-470や抗腫瘍剤である5-FU誘導体及びCPT-11は子宮肉腫の血管新生に対して著明な抑制効果を示し，その阻害効果は造影超音波にて評価可能であった．ソナゾイドはレボビストと比較して，腫瘍内のmicrocyclationの持続的な描出が可能であった．
結論:造影超音波は臨床，基礎両面において，腫瘍血管新生や微細な血流動態のrealtimeな描出に優れており，今後の癌診療における診断・治療において極めて有用である．
文献
　1.Emoto M, et al. （2003） J Clin Oncol 21:3703.
　2.Emoto M, Tachibana K, et al. （2007） Cancer Sci 98:929.
　3. 江本　精, 他. （2006） 産婦人科の治療 92:39.
　4. 立花克郎, 江本　精. （2006） 細胞 38:133.