Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション5
各領域の造影超音波の新展開

(S209)

消化管領域における造影超音波の応用

Clinical application of contrast ultrasound for the diagnosis of gastrointestinal tract diseases.

畠 二郎1, 眞部 紀明1, 今村 祐志2, 蓮尾 英明3, 春間 賢2

Jiro HATA1, Noriaki MANABE1, Hiroshi IMAMURA2, Hideaki HASUO3, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学, 2川崎医科大学内科学食道・胃腸科, 3川崎医科大学総合臨床医学

1Dept. of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Division of Gastroenterology, Dept. of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 3Dept. of General Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景】
本邦でのSonazoidTMの適応は肝腫瘍に限定されているが,非侵襲的な微細循環評価法として肝臓以外の領域における応用が期待されている.また消化管領域における超音波診断は次第に注目されつつあるが,造影超音波の応用に関する報告は少ない.そこで消化管領域における造影超音波の有用性に関して検討した.
【対象および方法】
2007年1月から2008年11月の間に当院でソナゾイドを用いた造影超音波を施行した472例.年齢は1歳から93歳(平均59.6±20.0歳),男性272例,女性200例である.対象臓器は食道5例,胃67例,十二指腸20例,小腸181例,大腸174例,虫垂25例で,検査目的を大別すると炎症性疾患における重症度評価134例,腫瘍性疾患の評価105例,虚血(疑いを含む)の判定107例,出血(疑いを含む)の検出77例,その他49例である.33例では生理的食塩水または麦茶に希釈したソナゾイドを飲用あるいは経カテーテル的に注入し,消化管内腔を造影,残り439例には0.015 ml / kgBWのソナゾイドをワンショット静注し,壁の染影を観察した.機器は東芝AplioTM,プローブは3.75 MHzコンベクス,6 MHzまたは7 MHzリニアを被検者や対象の条件に応じて適宜使用し,いずれの投与法においても低音圧harmonic imaging(mechanical inde :0.2 0.5)により観察した.なお,本研究は院内倫理委員会の承認および個々の症例からのinformed consentを得て行っている.
【結果】
1.全例において造影剤投与に伴う重大な有害事象は見られなかった.2.管腔内投与では全例で目的とする管腔の造影が得られ,腫瘍輪郭の明瞭化,狭窄の評価,穿孔の検出や穿孔部位の同定などに有用であった.3.静脈投与においては被検者の体格などの条件に応じたプローブの選択が不適切と思われた数例を除き,目的とする染影が得られた.腫瘍性疾患においては腫瘍血管の形状,分布,微小血管密度の評価に,炎症性疾患ではその染影度が活動性評価の指標として,虚血性疾患では虚血の判定に,消化管出血では活動性出血の検出に,それぞれ有用であった.
【考察】
造影超音波に特有の利点として,管腔造影においては管腔の形状のみでなく壁や壁外の状態も同時に把握可能であること,静脈投与では造影剤の間質への移行がないことから虚血の判定がより正確であること,またリアルタイムに血流を観察できることから鬱血の判定も可能であることなどが挙げられた.一方問題点は被検者の体格や観察対象の部位などに影響されるという超音波の一般的な欠点に加え,造影剤と組織の分離が困難な場合があることなどであった.また血管形状のより客観的な評価法,perfusionの定量化,velocityの定量化などが今後の検討課題として残された.
【結語】
消化管領域において造影超音波は各種疾患における病態の把握に有用である.また希釈した造影剤による管腔造影は管腔と同時に壁や周囲組織をリアルタイムに表示できる手法として従来の消化管領域における陽性造影剤にない優れた特徴を有している.