Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション4
びまん性肝疾患の超音波による評価

(S206)

Sonazoid造影超音波による慢性肝疾患肝実質血流の検討

Evaluation of the liver parenchymal blood flow by using Sonazoid-time-intensity-curve and the parametric image

和久井 紀貴, 渡辺 学, 住野 泰清

Noritaka WAKUI, Manabu WATANABE, Yasukiyo SUMINO

東邦大学医療センター大森病院消化器内科

Division of Gastroenterology and Hepatology, Toho University, Ohmori Medical Center

キーワード :

【背景】
門脈と動脈の2系統で栄養されている肝臓の血行動態は,それらの微妙なバランスの上に成り立っており,炎症・浮腫・壊死・線維化など様々な組織学的変化により変動する.とくに肝固有の栄養血管として重要でありかつ,病変の進展により門脈圧亢進症をきたす門脈血流は,低圧系であるが故に動脈よりも組織病変の影響を受けやすい.従って,門脈血流の詳細を把握することは病態理解すなわち,病変の進展度および合併症発現を知るという点で,臨床的に極めて意義多きものと思われるが,肝内で動脈と混ざり合ってしまう門脈血流を個別解析する簡便な手法はいまだない.そこで我々はこれまで,門脈,動脈2系統で栄養される肝臓独自の血流の変化を,動脈だけで栄養される腎臓の血流と比較画像化することにより解析検討してきた.
【目的】
Sonazoid造影超音波の造影早期肝・腎time intensity curve(TIC)を用いて慢性肝疾患の実質内血流動態の変化,特に門脈・動脈血流バランスの変化を明らかとし,さらにその臨床的意義を探る.
【対象】
慢性肝疾患の腫瘍スクリーニング造影超音波に際して,腫瘍検索に用いない早期血管相を肝実質血流の検討に供することに同意の得られたHCVによる慢性肝疾患と原発性胆汁性肝硬変の65例.
【方法】
装置は東芝AprioXG,条件はMI値0.22〜0.29(体表から腎までの距離によって調節),フレームレートは18fps,focusはこれも腎臓の深さにより6〜8cmに調節した.画像は,Sonazoid静注直後から30秒間,動画raw dataのかたちで装置のハードディスク内に記録し,検査終了後に装置のメニューに従いTICを得た.TIC描出に際しては,肝・腎ともにできるだけ大きなROIを設定し,流入した造影剤が実質に行き渡る動態を検討した.また,造影剤の肝内動態を視覚的にわかりやすくするため,神山によるparametric image変換プログラムを用いて,腎染影を起点0秒とした場合の肝染影遅延秒数をBモード画像上にカラー表示し検討した.
【結果】
慢性肝炎F1では,肝TICの立ち上がり角度は腎より明らかに緩やかであったが,F2,F3と病変が進むにつれ肝TICの立ち上がり角度は急峻となり,肝硬変では腎とほぼ同等になった.肝血流は病変の進展に従い腎に近づく,すなわち動脈化をきたすことが明らかであった.また,肝実質の染影動態を腎染影との時間差をパラメータとしたparametric imageに表すと,病変の進展をカラーで見ることができ,理解が容易となった.
【結論】
肝硬変では肝血行動態が腎臓に近づくすなわち,動脈が起こっていることがTICおよびparametric image両者で示された.肝の組織病変および血行動態を理解するために有用な手段と思われ,特に線維化の程度や門亢症発現時期の解析,その治療時期および戦略決定への応用が期待される.