Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション4
びまん性肝疾患の超音波による評価

(S205)

ラットNASHモデルにおけるソナゾイド造影超音波の後期相の評価

Evaluation of delayed parenchymal images by Sonazoid enhanced US in the non-alcoholic steatohepatitis in rats

平井 都始子1, 辻本 達寛1, 山下 奈美子1, 丸上 永晃1, 瓦谷 英人2, 福井 博2, 大石 元1

Toshiko HIRAI1, Tatshiro TSUJIMOTO1, Namiko YAMASHITA1, Nagaaki MARUGAMI1, Hideto KAWARATANI2, Hiroshi FUKUI2, Hajime OHISHI1

1奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, 2奈良県立医科大学第三内科

1Department of Endoscopy and Ultrasound,Nara Medical University, 2Third department of Internal Medicine,Nara Medical University

キーワード :

【目的】
日本超音波医学会第80回学術集会において,ラットNASHモデルにおけるレボビスト造影超音波後期相の造影能はkupffer細胞機能の低下を反映していることを報告した.今回,同じNASHモデルラットに対してソナゾイドによる造影超音波を施行し,ソナゾイドによる造影能を組織学的変化,kupffer細胞へのlatex beadsの取り込み,レボビストによる造影能と比較する.
【対象と方法】
雄性6週齢F344ラットに対し,コリン欠乏アミノ酸(CDAA)食を摂取させてNASHモデルを作成し,2,3,4,8週時にソナゾイド造影超音波を施行した.超音波装置はLOGIQ 7,9Lプローブを使用.ソナゾイド0.01mg/kgを静注し,30分後にcoded phase inversion(CPI,MI:0.16)モードで肝全体をスキャンした.続いて1断面を決めてバースト(最大出力で30フレーム)し,静注50分後にcoded harmonic angio(CHA,MI:1.0)モード,1秒間欠で観察した.全ての動画像を装置のハードディスクに保存しTIC解析した.また1μmのyellow-green fluorescent latex beadsを静注2時間後に儀死させ,蛍光顕微鏡でkupffer細胞への取り込みを観察した.
【結果】
1.ソナゾイド造影超音波
Bモード像:コントロール群に比べてCDAA投与群では,2週以降で肝は腫大し高輝度となった.
CPIモードによる観察:肝実質の輝度はコントロール群,CDAA投与群全て平均-80〜-78dBと明らかな変化を認めなかった.
バースト前後の輝度変化:コントロール群で平均11.5dB,2週8.8dB,3週6.0dB,4週2.7dB,8週0.57dBと週数が進むにつれて減少した.
CHAによる観察:コントロール群の平均-47.5dB,2週-48.9dB,3週-51.8dB,4週-59.3dB,8週-59.4dBと3週以降で低下を認めた.
2.病理組織像
HE染色で2週目より強い脂肪沈着を,アザン染色で3,4週後でF1,8週後にはF2の線維化を認めた.免疫染色でkupffer細胞数はコントロール群と各週群で有意差を認めなかった.
3.kupffer細胞へのLatex beadsの取り込み
コントロール群と比較して2週群で減少傾向を示し,3週以降は横ばいとなった.
【考察とまとめ】
造影剤の共振による信号を映像化するCPIモードでは,NASHモデルラットの肝組織の変化を輝度変化として捉えることはできなかったが,バーストや造影剤の崩壊による信号を映像化するCHAモードでは,その変化を輝度の変化として捉えることができた.CPIモードでは組織からの信号の影響を受けるため,輝度の変化が捉えにくかった可能性が考えられる.ソナゾイドによるCHAモードでの静注50分後の造影能は,レボビストによる造影能と同様の傾向を示していた.バーストでは週数につれて輝度差が低下するのが観察され,より定量的な評価が可能になると思われる.ソナゾイドによる肝造影能を病理組織と比較すると,脂肪沈着やkupffer細胞数は造影能との相関を認めなかったが,kupffer細胞のlatex beadsの取り込み低下や線維化が進むにつれ,造影能は徐々に低下し,ソナゾイド造影超音波後期相の造影能は,CHAモードやバーストなど造影剤を壊して観察する手法により肝のkupffer機能や線維化を反映していることが示唆された.