Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション4
びまん性肝疾患の超音波による評価

(S205)

高音圧送信法を併用したソナゾイド造影超音波による肝線維化の診断

Contrast Enhanced Ultrasound with Sonazoid for the Evaluation of Hepatic Fibrosis.

石橋 啓如1, 丸山 紀史1, 高橋 正憲1, 藤原 慶一1, 今関 文夫1, 横須賀 收1, 神山 直久2

Hiroyuki ISHIBASHI1, Hitoshi MARUYAMA1, Masanori TAKAHASHI1, Keiichi FUJIWARA1, Fumio IMAZEKI1, Osamu YOKOSUKA1, Naohisa KAMIYAMA2

1千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科, 2東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

1Department of Medicine and Clinical Oncology,Chiba University Graduate School of Medicine, 2Ultrasound Systems Dvelopment Department,Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【目的】
ソナゾイドは,低音圧下ハーモニック超音波で安定した肝造影効果を示す.一方,高音圧照射(High Power Emission,HPE)によってその気泡は容易に崩壊することから,照射前後の画像を解析することで気泡の崩壊度を定量的に測定することができる.本剤は肝網内系組織に蓄積することが知られており,肝実質における気泡含量は,肝線維化の程度を間接的に反映している可能性がある.そこで今回,慢性肝疾患例においてHPE前後の肝内気泡崩壊度を検討し,肝線維化の診断における本法の有用性について考察した.
【対象と方法】
健常例33例(NO群,46±17才,男19,女14),慢性肝炎44例(CH群,53±12才,HCV32,HBV8,自己免疫性肝炎(AIH)3,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)1,男16,女28)及び肝硬変30例(LC群,59±10才,HCV13,HBV1,アルコール性2,AIH3,NASH5,原発性胆汁性肝硬変3,原因不明3,Child-Pugh grade A 14,B 15,C 1,男12,女18)の計107例を対象とした.なおCH,LC群は全例組織学的に診断(F1:18,F2:10,F3:16,F4:30)された.肝右葉をPulse Subtraction Harmonic Imaging(APLIO,MI0.25,PVT-375BT)にて観察し,ソナゾイド(0.0075ml/kg)静注後,5,10,15分の三つの時相で,異なる断面に対してHPEを行った.HPE直後の画像Aにおける気泡崩壊に関して,その超音波所見やHPE直前画像Bとの輝度差B-A(dB)を検討した.なお本研究は倫理委員会の承認と同意取得の上で行われた.
【結果と考察】
(1)超音波所見の定性的検討:肝実質はHPE直前の画像で均一な造影効果を認めた.HPE直後には気泡崩壊によって肝表側が低輝度域(第1層)に変化し,その深部に帯状の高輝度域(第2層)や輝度変化に乏しい最深部層(第3層)を伴う症例も認められた.15分相での三層像はNO群の30/33例(90%)にみられたが,LC群では1/30例(3%)でのみ観察された.5分相における一層の実質像はNO,CH群ではみられず,LC群でのみ観察された.このようにHPE直後の画像における層数は肝疾患の進行とともに減少することが示された.(2)輝度変化の定量的検討:B-A(15分相)はF0群-22±2.5,F1群 -21±2.3,F2群-20±1.1,F3群 -17±2.2,F4群-13±3.3であり,F因子に伴い減少した.5,10分相においても同様の傾向を示し,F因子間でのB-A値に差を認めたが,特に15分相ではF0とF1,F1とF2以外の全群間で有意差(p<0.01)がみられた.以上より,肝実質における気泡崩壊度は,肝線維化に伴った血管床・類洞の減少や網内系組織における気泡蓄積能の低下を反映したものと推察された.一方,血管内造影効果は5分相の64例(60%),10分相の27例(25%),15分相の10例(9%)で観察された.したがって,HPEによる肝実質での輝度変化値には蓄積された静止状態の気泡以外に循環中の気泡も関与していると考えられるが今回の成績からは,本法では必ずしも血管内造影効果の消失を必要条件としないものと思われた.
【結論】
高音圧送信法を応用したソナゾイド造影超音波は新たな非侵襲的肝線維化診断法として期待される.