Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション3
自覚症状に対応した領域を超えた超音波検査:腹痛の超音波検査による鑑別診断

(S201)

自覚症状に対応した領域を超えた超音波検査:腹痛の超音波検査による鑑別診断,小児

Ultrasonographic differential diagnosis of disease with abdominal pain in pediatric population

金川 公夫

Kimio KANEGAWA

自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児画像診断部

Pediatric radiology, Jichi children’s medical center Tochigi

キーワード :

 成人では腹痛の有無やその部位を容易に確認できるが,小児の場合は必ずしもそうではない.新生児,乳児などでは本人が“おなかが痛い”と訴えることはなく,主治医の触診などから推察するに過ぎない.また,年少児では腹痛を訴えても,部位を特定することが困難なこともある.このように,小児では客観的な所見が得られないことも多く,年齢も考慮して,腹痛を起こす疾患について,ひとつひとつ丹念に検索する必要がある.
 腹痛を起こし,超音波検査が有用と考えられる疾患としては,消化器疾患として腸重積,虫垂炎,アレルギー紫斑病,出血性腸炎(溶血性尿毒症),中腸軸捻転が,肝胆道疾患として総胆管拡張症が,泌尿器疾患として年長児の水腎症(腎盂尿管移行部狭窄による)やウイルムス腫瘍(約30%),腎尿管結石が,生殖器疾患として卵巣軸捻転,処女膜閉鎖に伴う血膣症,他に膵炎などが挙げられる.なかでも腸重積,虫垂炎は頻度が高く,重要な疾患である.また,男児の場合は急性陰嚢症にも注意が必要である.
 腸重積ではcresent in doughnut sign,pseudokidney signなどの特徴的な超音波検査所見が得られるために,鑑別診断に苦慮することは少ない.6ヵ月から3歳までに認められることが多いため,好発年齢以外で発症した場合の先進部病変(腸管重複症,メッケル憩室,悪性リンパ腫など)の有無を確認することが必要である.虫垂炎は圧迫しても形態が変化しない6mmを超える腫大した虫垂,虫垂結石を伴う虫垂が認められれば診断可能である.メッケル憩室炎が重要な鑑別疾患のひとつであるが,その診断は容易ではない.総胆管拡張症では総胆管の嚢腫状あるいは紡錘状の拡張を伴う.肝管や肝内胆管の拡張を伴うこともある.総胆管の拡張が紡錘状の場合はbile plug syndromeが似たような像を呈することもある.アレルギー性紫斑病では強い腹痛を生じるが,紫斑出現前に腹痛で発症することがあり,超音波検査で小腸壁の肥厚を描出することは重要である.出血性腸炎では結腸の壁肥厚が認められる.カラードプラでは血流が前駆期では減少し,回復期では増加してくる.アレルギー性紫斑病と出血性腸炎の鑑別が必要なこともあるが,病変部位から鑑別可能である.中腸軸捻転は腹痛というより嘔吐が目立つが,軸捻転を生じれば,腹痛も伴うと思われることと,新生児の重要な疾患であるので,取り上げることとする.プローブを頭側から尾側に動かした際に,上腸間膜動脈の周りを上腸間膜静脈が回転する像(whirl pool sign)で行われる.血行障害がある場合は上記血管が描出できず,腸管が渦巻き状に回転する像が認められることもある.急性陰嚢症には精巣軸捻転と精巣上体(精巣)炎が含まれ,両者を鑑別する必要がある.前者では血流が低下し,後者では精巣上体を中心として血流が増加する点が重要な鑑別点である.
 超音波検査所見を記載した疾患を中心にして,画像を供覧する予定である.