Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション3
自覚症状に対応した領域を超えた超音波検査:腹痛の超音波検査による鑑別診断

(S200)

消化器領域から見た腹痛の超音波診断

The ultrasonic diagnosis of the abdominal pain of gastroenterology

小川 眞広, 阿部 真久, 松本 直樹, 中河原 浩史, 廣井 喜一, 山本 敏樹, 森山 光彦

Masahiro OGAWA, Masahisa ABE, Naoki MATSUMOTO, Hiroshi NAKAGAWARA, Yoshikazu HIROI, Toshiki YAMAMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA

駿河台日本大学病院消化器肝臓内科

Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Surugadai Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査は非侵襲的な検査法であり腹痛時の第一選択の検査法と考えられる.検診などで行なうスクリーニング検査法とは異なり急性腹症も含まれるため時間的な制約もあり,空気・骨などの死角の存在を自覚し,必要以上に検査時間を延長させないことも大切となる.超音波検査はまず,痛みの原因と病態の把握を行なうことが第一の目的となるが,全ての症例で原因としての病変が直接描出できるわけではない.症例によっては,間接所見から原因を推察することも必要で,この際緊急性の病態の把握や次に優先させる検査法を決定できるようにする必要がある.また,超音波検査は非侵襲的なため複数回の検査も可能であり,1回の検査では分からなくても経過観察により原因が究明されることも経験する.さらに超音波検査にはドプラ検査という血流診断のほか,経静脈性超音波造影剤の導入により血流情報も加味できるようになっている.今回ここでは,実際の症例提示しながら鑑別診断を行なう上で知っている必要がある疾患の超音波画像につき解説する.
【検査のポイント】
病態の面から考えると,腫瘍性疾患の有無,炎症の有無,閉塞の有無,そして随伴所見となる.走査上でのポイントは次の4点に大きく集約されると考える.①痛みの部位を直接scanして原因が同定できる疾患(救急疾患においては,腹痛部位を触診するような感覚でまず責任病変の同定から行なうことが多く,これにより痛みの同定が出来る疾患で胃潰瘍や膵癌をはじめとする悪性疾患,解離性大動脈瘤など大血管の病変も含まれる).②間接所見からの病態把握・疾患の推測(腹水貯留,腸液の貯留,胆管拡張,胆嚢腫大,尿管拡張など直接病変が描出できなくても病態把握に重要な所見).③広範囲のscanにより原因が同定できる場合(癌性腹膜炎など広範囲なscanを通して初めて病態の把握が可能となる疾患).④超音波検査自体の観察が不良となる場合(消化管穿孔などその所見によりアーチファクトが広がり超音波検査が施行し難くなる病態).また,超音波検査の欠点として客観性の低さが挙げられるため,客観性の高い画像を撮影し検者以外の第三者にも診断可能となる像を撮影することも重要となる.これは経過観察時にも重要な点で,具体的には必ず同じ拡大率から撮影を開始し,目印となる臓器・脈管などを一緒に撮影する癖をつけておくことで,間違っても有所見の拡大写真ばかりにならないように注意する必要がある.
【まとめ】
腹痛の診断において超音波検査は,高分解能で有益な情報を非侵襲的に得られる手法ととして極めて重要な検査法である言える.