水口 安則

Yasunori Mizuguchi

国立がんセンター中央病院臨床検査部

Clinical Laboratory Division National Cancer Center Hospital

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　近年の超音波映像化技術の進歩は著しい．超音波画像はより高分解能化し，また，良好なペネトレーションが得られるようになってきた．これらの恩恵を受けて，これまで描出困難であった小さな病変や，病変内のより細かな構造を描出することができるようになった．あるいは骨盤内などの深部に位置する病変も，より明瞭に観察することができ，さらに正確な存在診断，質的診断に役立っている．超音波検査には，特別な処置を必要とせず，目的とする臓器にプローブをあてるだけで観察できる利点があることは言うまでもない．この利点を生かし，我々は通常の腹部超音波検査の際には，ルーチン走査の一部として子宮・卵巣・膀胱を含めた骨盤内臓器の観察を加えている．偶発的に婦人科領域疾患や膀胱疾患を発見することがあり，臨床上有用性が高いと実感している．腹部ルーチン検査の場合，特別な尿貯留の指示は行っていない．尿貯留不十分な場合でも，臨床的意義のある病変は発見可能であると考える．一方，婦人科領域の経腹的超音波検査の際にも，子宮・付属器の走査に限ることなく腹部領域を広範囲に観察することが望ましいと考える．例えば卵巣腫瘍を認めた場合は，胃癌や大腸癌からの転移性卵巣腫瘍の可能性を考慮して，同時に消化管も観察することが的確な診断に結びつく場合がある．絶食などの前処置なしでも原発巣を特定できる可能性があり，異常所見を発見した場合は，改めて他のモダリティを含めた精査を施行すればよい．
　今回，婦人科領域原発腫瘍に伴う腹部病変，または腹部領域腫瘍の子宮・付属器への転移性腫瘍について具体的症例を提示して解説する．子宮・付属器原発腫瘍に伴う腹部病変として，転移性肝腫瘍，転移性脾腫瘍，腹膜播種性腫瘍，あるいは腹膜偽粘液腫などが挙げられる．時間の許す範囲内で，これらの病変と鑑別診断が必要な肝腫瘍や脾腫瘍も提示したい．また，腹部領域腫瘍，特に消化管原発腫瘍の子宮・付属器への転移性腫瘍や悪性リンパ腫などの病変についても症例を提示し解説する．