Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム16
産婦人科医が行う他領域超音波

(S188)

全身麻酔手術症例における静脈血栓塞栓症の術前スクリーニングと周術期予防

Screening and prevention of venous thromboembolism for the general anesthesia surgery

金岡 保, 佐伯 宗弘, 岡田 泰司, 原田 真吾, 丸本 明彬, 中村 嘉伸, 西村 元延

Yasushi KANAOKA, Munehiro SAIKI, Yasushi OKADA, Shingo HARADA, Akira MARUMOTO, Yoshinobu NAKAMURA, Motonobu NISHIMURA

鳥取大学医学部器官再生外科学

Department of surgery, Division of organ regeneration surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
全身麻酔手術において,執刀医は術前に深部静脈血栓症(DVT)の存在を鑑別し,周術期に肺血栓塞栓症の予防に努める義務がある.本研究では,産婦人科領域を含めた各種全身麻酔手術症例に対し,静脈血栓塞栓症の術前スクリーニングおよび周術期の予防に関する院内マニュアルを作成して実行し,DVTの効率的な鑑別法と予防法を検討する.また,DVTの早期診断法としての静脈エコーの問題点を提起する.
【対象と方法】
対象は,2007年1月から12月に鳥取大学医学部附属病院で施行した全身麻酔手術症例3,463例である.1)麻酔担当医が,術前診察時に,DVTの危険因子14項目(血栓性素因,腓腹部痛,他)を点数化し,合計4点以上に緊急Dダイマーを測定する.2)Dダイマー値(当院基準値<1.0μg/ml)の異常が判明したら,下肢静脈エコーを行いDVTを鑑別する.3)DVT症例に対しては術中術後に低用量未分画ヘパリン持続静注による抗凝固療法(ACTを130-150秒に設定)を実施する.4)非DVT症例に対しては弾性ストッキング着用や間歇的空気マッサージ装着等の圧迫療法を行う.
【結果】
1)DVT危険因子の合計が4点以上でDダイマー値も異常症例は88例(全体の2.5%,男36例,女52例,年齢67±15歳),Dダイマー値は7.2±7.3μg/mlであった.2)下肢静脈エコーでDVTが判明した症例は5例(Dダイマー値異常例中の5.7%,全体の0.14%),Dダイマー値の最小は2.7,最大は19.8であった.血栓の先進部位は総腸骨静脈1例,総大腿静脈2例,ヒラメ筋静脈2例であった.3)DVT症例に対し低用量未分画ヘパリン持続静注を5例ともに行い,二次予防を得た.4)非DVT症例に対して圧迫療法を行い,一次予防を得た.
【結論】
全身麻酔手術における静脈血栓塞栓症の術前スクリーニングおよび予防マニュアルを作成した.DVTの危険因子14項目を点数化し,合計4点以上に緊急Dダイマーを測定し,異常値であれば下肢静脈エコーを行う.DVTが判明したら,周術期は低用量未分画ヘパリン持続静注による抗凝固療法を行う.本マニュアルに基づいて,術前にDVTを5例発見したが,周術期に静脈血栓塞栓症の二次予防を果たした.非DVT症例に対しては圧迫療法を行い,一次予防を得た.
 下肢静脈エコーは,他の超音波検査と同様に使い慣れることが重要である.部位や加齢の異なる静脈血栓を多数経験する必要があり,その過程で修得された知識,技術,判断が正確な診断につながる.