Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム16
産婦人科医が行う他領域超音波

(S187)

乳腺専門医より産婦人科医によせる期待

Expectations of specialist on breast diagnosis for gynecologist

水谷 三浩, 吉田 直子, 中村 愉紀, 安井 真由美, 都築 則正

Mitsuhiro MIZUTANI, Naoko YOSHIDA, Yuki NAKAMURA, Mayumi YASUI, Norimasa TSUDUKI

三河乳がんクリニック

Mikawa breast cancer clinic

キーワード :

がん検診でがんが早期発見されることによって国民のがん死の減少する効果の得られるのは,対象人口の7〜8割が検診を受診してはじめて実現するのだという.しかるに我が国の乳がん検診対象者の検診受診率は正確に掌握されておらず詳細は不明であるが,他のがん領域も含め理想と現実の解離は相当なものと想定される.このため厚生労働省は当面の目標として,乳がん検診受診率50%の達成を目指した指導を展開している.しかしながら実際に対象女性の7〜8割が検診を受診したら,経済的にまた検診を担当する機関および担当医師・技師の受容能力は対応しうるか,という懸念がある.超音波は担当医師・技師の力量に大きく依存し,効率性ではマンモグラフィと比較しがたい.されどdense breastを有する女性の割合の高い本邦で早期乳がんの発見に努めるのならば,超音波の検診への導入の必要性がけっして揺らぐことはなかろう.増加の一途を辿っている本邦の乳がん死を減少させる悲願をかなえるため,高精度の乳房超音波検診システムを構築すべく超音波医学会をはじめとする関係諸学会が一堂に参画し,一致団結しての取組みが今こそ求められているのだ.そのうえで,乳がん検診と婦人科検診とを合わせて産婦人科にて受ける女性が多数を占める実情を鑑みると,乳がん検診の普及と受診率向上のために,乳がん検診の担い手として産婦人科医への期待は大変に大きいものがある.実際,多くの産婦人科医から乳がん検診に携わろうとする強い意欲が示されており,乳房超音波に長じた産婦人科医が今後次々と排出されるものと思われる.さて乳房超音波のプロとなるためにはそれなりのトレーニングが必須である.繰り返すが,マニュアルで探触子が操作されている現状において,探触子を握る検査担当者の診断能力にその精度は大きく依存している.超音波検査中に担当者の判断でいったん病変が見落とされてしまえば,検査後にビデオなどで第三者が見直して再度病変を拾い上げることは極めて困難であり,超音波検査はいわばやり直しのきかない一発勝負だからである.さらに無症状者からの早期がんの発見が検診本来の理想であることからすれば,むしろ検診担当者に高い診断能力を要求せざるをえない.微小腫瘤や等エコーに近い腫瘤および腫瘤像非形成性病変などを適確に検出することはまさに高次元の診断能力が成せる業といえよう.すなわち高精度の超音波検診がもたらすがん患者への福音に他ならない.それでは,いかにすれば前述の病変(微小腫瘤,等エコーに近い腫瘤,腫瘤像非形成性病変など)を見落とすことなく拾い上げられるのであろうか.その具体的な方法論について,学会場で実例の画像を供覧しながら,参加者とともに議論を深めたい.ここに要約のみを述べると,答えは2つある.まず乳腺疾患および画像診断における深い学識を身に付けること.それは病理に基づき超音波画像の成立ちを絶えず鑑みる,真摯かつ謙虚な姿勢を保つことでもある.そしてその姿勢を支える強い信念をもつこと.我々の日々の努力が患者を救うという確固とした信念を抱き,決して妥協しない情熱を燃やし続けることである.一人でも多くの産婦人科医が高き理想のもと,増え続ける乳がんに立ち向かう同志として,高周波探触子を握られんことを願ってやまない.