Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム15
消化器領域における超音波診断基準の検証

(S185)

慢性膵炎臨床診断基準改定案における超音波所見の検証

Verification of ultrasound findings in the revised diagnostic criteria for chronic pancreatitis.

阪上 順一1, 2, 保田 宏明1, 片岡 慶正1, 吉川 敏一1

Junichi SAKAGAMI1, 2, Hiroaki YASUDA1, Keisho KATAOKA1, Toshikazu YOSHIKAWA1

1京都府立医科大学医学部医学研究科・消化器内科学, 2京都府立医科大学附属病院中央診断部・超音波室

1Graduate School of Medical Science, Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto Prefectural University of Medicine, 2Section of Ultrasonography, Medical Examination Center, University Hospital, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【はじめに】
現在,厚生労働科学研究費補助金難治性膵疾患克服研究事業:難治性膵疾患に関する調査研究班では慢性膵炎臨床診断基準改定作業が進行中であり近く公表される.改定案の超音波確診・準確診所見が現行の慢性膵炎臨床診断基準(2001年)と異なる点は,膵石エコーを分布様式により3つに細分すること,膵内粗大高エコーが削除され,膵実質エコーの不均一が加わることである.
【目的】
慢性膵炎確診・準確診の超音波所見が改定されると,膵内外分泌予測にどのような変動が生じるか検証する.新設が予定されている早期慢性膵炎は,膵内外分泌障害をきたさない代償期病態と考え今回の検証から除外する.
【方法】
腹部超音波と糖尿病の検索とセクレチン試験を同時期に実施した慢性膵炎269例を対象とした.慢性膵炎診断基準(2001)の超音波判定基準,すなわち,音響陰影を伴う膵内の高エコー像(膵石エコー),膵内の粗大高エコー,膵管の不整拡張,膵管拡張(内腔が2mmを超え,不整拡張以外),辺縁の不規則な凹凸がみられる膵の変形,膵嚢胞,膵腫瘤,膵腫大の8項目に加えて,膵萎縮,高エコーの膵を併せた10項目を独立変数とした.空腹時血糖値≧126mg/dl,75gOGTT 2時間値≧200mg/dl,随時血糖値≧200mg/dl,のいずれかが2回以上確認できれば糖尿病と考え,膵内分泌不全の従属変数とした.また,セクレチン試験において最高重炭酸塩濃度低下に加えて,アミラーゼ排出能低下と膵液量低下の両者か一方の減少を膵外分泌不全所見の確診とみなし,膵外分泌不全の従属変数とした.次に,慢性膵炎診断基準改定案の確診・準確診所見で取り上げられている超音波判定基準,すなわち,膵管内の結石,膵全体に分布する複数〜びまん性の石灰化,膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコー,膵管の不整拡張,膵実質エコーの不均一,辺縁の不規則な凹凸がみられる膵の変形の6項目を独立変数として同様の検証を行った.点推定はオッズ比(OR)を用いFisherの直接確率計算(EPT)を実施した.多変量解析にはロジスティック回帰分析(LR)を用いた.
【成績】
慢性膵炎診断基準(2001)の超音波判定基準における確診・準確診所見で膵外分泌不全を予測する独立した影響因子は,音響陰影を伴う膵内の高エコー像(膵石エコー):OR(P<0.0001)LR(P=0.0005)と膵内の粗大高エコー:OR(P<0.0001)LR(P=0.0483),膵内分泌不全を予測する独立した影響因子は,音響陰影を伴う膵内の高エコー像(膵石エコー):OR(P<0.0001)LR(P=0.0015)と辺縁の不規則な凹凸がみられる膵の変形:OR(P<0.0001)LR(P=0.0046)であった.一方,慢性膵炎診断基準改定案の超音波判定基準における確診・準確診所見で膵外分泌不全を予測する独立した影響因子は,膵管内の結石:OR(P<0.0001)LR(P=0.0119),膵内分泌不全を予測する独立した影響因子は,辺縁の不規則な凹凸がみられる膵の変形:OR(P<0.0001)LR(P=0.0076)であった.
【結論】
慢性膵炎診断基準改定案の各超音波所見は膵内外分泌不全に強く関連し,膵内分泌不全に関連が少ない膵内の結石を準確診とすることの妥当性がみられた.その反面,膵管内の結石とびまん性結石の膵内外分泌機能不全に関与する独立性がかえって低下した.膵内粗大高エコーが削除され,膵実質エコーの不均一が加わることは,膵内外分泌機能不全を予測する点において大きな前進はみられなかった.