Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム15
消化器領域における超音波診断基準の検証

(S183)

肝腫瘍の診断基準

Diagnostic criteria for hepatic tumor

熊田 卓

Takashi KUMADA

大垣市民病院消化器科

Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波検査(US)の中で肝腫瘤性病変の存在診断・質的診断の占める重要性は高い.1988年11月30日に「日本超音波医学会医用超音波診断基準に関する委員会」より公示された「肝腫瘤の超音波診断基準」は大変優れ一般に広く受け入れられ活用され,大きな役割を果たしてきた.しかし,最近の超音波機器の進歩および疾患概念の変化により,以前作成された超音波診断基準では対応ができない点が多々見られるようになった.このため日本超音波医学会用語・診断基準委員会では「肝腫瘤の超音波診断基準(1988/11/30)の改訂」の小委員会が平成18年度に田中幸子委員長の元に発足し(現:貴田岡正史委員長),平成21年度中の完成を目指し活動中である.本シンポジウムでは小委員会で審議中の内容の一部を公開し,ご意見をいただければと考えている.
【対象】
この基準は腹部USの適応となるすべての人が対象となる.とくに,基礎に慢性肝障害(B型/C型慢性肝炎・肝硬変,非B非C型肝硬変など)を有している患者は定期的に腹部USを行う必要がある.
【存在診断】
基本的には1988年11月30日に公示された診断基準に従い,確診,疑診,要精査,判定保留を規定した.存在部位は小さな腫瘍ではCouinaudの区域で,大きな腫瘍ではHealeyの区域に従い記述する.
【質的診断】
質的診断には(1)Bモード所見,(2)ドプラ所見,(3)造影所見の3種類がある.現在,Bモード所見とドプラ所見についてはおおよその案が定まってきている.表1にBモード所見の案を示す.肝細胞癌,肝細胞腺腫,肝内胆管癌,転移性肝腫瘍,肝血管腫,限局性結節性過形成の6疾患を鑑別の対象としている.転移性肝腫瘍は上皮性,非上皮性の区別は無くし,肝細胞癌は批判もあると思うがサイズ,随伴所見,間接所見についても記載した.ドプラ所見,造影所見もこの6疾患を対象として所見を記載している.肝臓は肝動脈(25-30%)と門脈(70-75%)の2重支配で,超音波造影剤を静脈から投与すると3つのオーバーラップする時相(phase,造影超音波検査における造影剤投与後の経時的撮像タイミング)が観察され,時相の定義については検討中である.
【結論】
「肝腫瘤の超音波診断基準」改定の問題点を述べた.より使いやすい診断基準の作成のためにご意見をいただければ幸いである.