Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム15
消化器領域における超音波診断基準の検証

(S183)

肝細胞癌の診断基準の検証

Verification of the ultrasonic diagnosis standards of the hepatocellular carcinoma.

小川 眞広1, 阿部 真久1, 松本 直樹1, 中河原 浩史1, 廣井 喜一1, 山本 敏樹1, 森山 光彦1, 高山 忠利2, 杉谷 雅彦3, 石田 秀明4

Masahiro OGAWA1, Masahisa ABE1, Naoki MATUMOTO1, Hiroshi NAKAGAWARA1, Yoshikazu HIROI1, Toshiki YAMAMOTO1, Mituhiko MORIYAMA1, Tadatoshi TAKAYAMA2, Masahiko SUGITANI3, Hideaki ISHIDA4

1駿河台日本大学病院内科, 2駿河台日本大学病院外科, 3駿河台日本大学病院病理, 4秋田赤十字病院消化器科

1Internal medicine, Surugadai Nihon University hospital, 2Surgery, Surugadai Nihon University hospital, 3Pathology, Surugadai Nihon University hospital, 4Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
1989年に超音波医学会で提唱された「肝腫瘤の超音波診断基準」は現在改定作業中である.主に存在診断と質的診断に大きく大別されるが,質的診断に関しては装置の改良により細かな観察が可能になってきている半面何処まで深く追求するか,またカラードプラ検査や造影超音波による診断をどうするかなどの問題を抱えている.これまで肝細胞癌の超音波の診断基準は,これまで薄い辺縁低エコー帯,mosaic pattern(nodule in nodule),後方エコーの増強,外側陰影時にあり,とされている.具体的に辺縁低エコー帯といってもどの程度が肝癌の診断に至る薄いものなのか?,何処から転移性肝癌を意識した厚いものととるのか?,mosaic patternは隔壁が描出されたもののみ所見を取るのか?内部が不均一なものは全てはいるのか?など客観性に乏しい点が問題であると考えられる.これを補う手法としては近年超音波検査にも造影検査が導入され,造影超音波所見も付加することで精度が上昇すると考えられる.今回我々は,Sonazoidを用いた造影超音波を施行した肝細胞癌切除症例を対象としてB-mode像と造影超音波所見を組織像と比較したので報告する.
【対象】
術前に超音波B-mode像および造影超音波検査を施行した切除肝細胞癌症例21症例である.背景肝疾患はHCV陽性16結節,HBs抗原陽性6結節,HCV抗体陰性・HBs抗原陰性2結節である.
【方法】
使用装置:GE横河メディカルシステムLOGIQ7,使用探触子3.5CS,4C,9L,造影方法sonazoid0.015ml/kgまたは0.5ml/bodyの急速静注で行った.造影modeはCPI (Coded phase inversion mode),phase inversionのTissue harmonic B-modeである.造影剤注入後約1分までをearly arterial phaseとし,約10分以降をpost vascular phaseとして肝実質と造影剤の残存を比較し欠損像が得られない症例では随時観察時間を延長して行なった.B-mode像と造影所見について腫瘍肉眼型分類,組織分化度と比較を行った.
【結果】
平均腫瘍径は26,8mm(7〜79mm).診断基準にある超音波B-mode像の割合は,辺縁低エコー帯62%,mosaic pattern57%,外側陰影38%である.腫瘍肉眼分類は,小結節境界不明瞭型8.3%,単純結節型54.2%,単純結節周囲増殖型20.8%,多結節癒合型16.7%である.組織分化度は高分化型29.2%,中分化型66.7%,低分化型4.2%である.辺縁低エコー帯の厚さは,病理組織学上の線維性被膜の厚さは様々であり必ずしも相関しているとは限らなかった.厚い被膜を有する症例では,ほとんどの症例で側方エコーを認めており有用な所見と考えられた.造影超音波検査の所見では,全例でearly arterial phase腫瘍濃染像,post vascular phase欠損像を認めていたが,腫瘍濃染パターンと血管構築,post vascular phaseにおける腫瘍輪郭の描出が腫瘍肉眼型の診断に極めて有用であった.
【結語】
肝細胞癌の超音波診断は,B-modeに加え造影超音波検査を加えることでより正確になると考えられた.