Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム15
消化器領域における超音波診断基準の検証

(S182)

医用超音波用語「辺縁」の誤用

Misuse of the medical ultrasound terminology; “periphery”

藤本 武利

Taketoshi FUJIMOTO

平塚胃腸病院外科

Surgery, Hiratsuka Gastroenterological Hospital

キーワード :

 いつになったら,医用超音波用語「辺縁」が正しく使用されるのであろうか.最新の医用超音波用語集(第4版:平成17年12月20日発行)記載の定義を遵守した「超音波医学」掲載論文は,残念ながらかなり少ない.
 私は,10年以上も前よりこの問題に関して本学会に注意を喚起し,折に触れて超音波講習会などでもこの重要性を強調してきた.辺縁・境界・輪郭・周辺が相互に誤りやすい傾向は,今も続いている.特に「辺縁」を「輪郭」のように使用する誤りが目立つ.前掲用語集では,「辺縁:腫瘤や臓器の境界の内側部分」と定義されている.すなわち,辺縁はある領域を示すので,この属性として「腫瘤の辺縁が不整…」とか,「腫瘤の辺縁が平滑…」という表現は適切でない.実際,「内側部分が不整」という表現には違和感があり,「腫瘤の輪郭が不整…」のほうがしっくりする.
 ちなみに,「超音波医学」34巻第3号の掲載論文からは,次のように多数の誤用例を抽出できる.p282:Fig.1「膵の輪郭」(これは正しい)/p286:左7行目「辺縁平滑」/p288:右16行目「膵辺縁の凹凸不整」Fig.8説明文「膵辺縁に凹凸」/p290:右6行目「辺縁の不整な凹凸」右9行目「辺縁の凹凸」/p294:右5行目「辺縁は多くは不整像を呈し」/p299:右2行目「辺縁が不整」/p313:抄録6行目「辺縁明瞭」/p316:右23行目「辺縁明瞭」/p322:右13行目「辺縁はやや不整」(なお,p323左6行目「辺縁部位に軽度血流シグナルを認める」と記載されているのは,正しい.)/p329:抄録10行目「辺縁不整」/p336:右13行目「辺縁不整」/p337:右11行目とFig.11「辺縁不整」/p338:左12行目「辺縁不整」
 ところで,この「辺縁」の誤用は放射線科医に多い印象を持っていたので,医学放射線学会「放射線診療用語集:改訂2版」を調べてみると,「辺縁=periphery,臓器または腫瘤内部のうち境界に近い部分」と定義されており,本学会と同じであった.
 以前,日消誌の特別企画「認定医資格認定試験問題とその解説(第33回)《問題2》肝の超音波診断」の解説文中で「辺縁に不整のない」という表現がみられた.この表現を不適切とした私の異議申し立てに対して,以下のように迅速な対応をしていただいた(編集委員長よりの訂正とお詫び:日消誌94巻3号230頁〜231頁(1997)問題2の原発性肝癌の超音波像の解説に対し,読者より「辺縁に不整のない」との表現は不適切とのご指摘をいただきました.医用超音波用語の定義では「輪郭に不整のない」が正しい表現ですので,解説者の了解を得てここに訂正させていただきます.[日消誌1997;94:516]).問題の重要性に鑑み,早急な対処を要するものと考える.