Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム14
各領域におけるStrain Imaging の臨床応用とその開発

(S179)

Elastographyによる子宮頸部の硬度評価

Evaluation of the uterine cervical stiffness by real-time tissue elastography

小松 篤史1, 上妻 志郎1, 山口 俊一1, 砂川 空広1, 吉田 史朗1, 兵藤 博信1, 菊池 昭彦2, 亀井 良政1, 武谷 雄二1

Atsushi KOMATSU1, Shiro KOZUMA1, Shunichi YAMAGUCHI1, Sorahiro SUNAGAWA1, Shiro YOSHIDA1, Hironobu HYODO1, Akihiko KIKUCHI2, Yoshimasa KAMEI1, Yuji TAKETANI1

1東京大学女性診療科・産科, 2長野県立こども病院総合母子周産期医療センター

1Obstetrics and Gynecology, The University of Tokyo Hospital, 2Department Obstetrics, Center for Perinatal Medicine, Nagano Children’s Hospital

キーワード :

 妊娠の経過に伴って子宮頸部は熟化し軟化するが,早期の子宮頸部軟化は早産のリスクが高く,一方で子宮頸部軟化の遅延は難産のリスクがあり,子宮頸部の硬度を評価することは産科臨床上重要である.従来より子宮頸部の硬度の評価は内診により行われているが,検者の主観により強い影響を受けるため,より客観的な計測法の開発が望まれている.Real-time Tissue Elastography(以下elastography)は超音波を用いて組織弾性の分布をリアルタイムに映像化する組織弾性イメージング技術であり,乳腺や甲状腺では普及しつつあるが産婦人科領域では用いられていない.
 我々は1).子宮頸部elastographyが妊娠の経過に伴ってどのように変化するか,2).ROIの設定方法及び圧迫操作の方法がelastographyの結果にどのような影響を及ぼすかについて検討した.

1).非妊婦・妊娠前期・妊娠中期・妊娠後期の4群に対し子宮頸部elastographyを施行した.子宮頸部をUpper zone,Lower zone,Middle(outer/inner/border) zonesの5つの領域に分け,色の変化を検討した.Upper zoneは妊娠後期にはほとんどの例がyellow-redを示したが,それ以外の時期では全てblueであった.Lower zoneは妊娠経過に伴い徐々にblueを示す割合が減少した.Middle zoneでは妊娠経過に伴う変化は明らかでなかった.以上より子宮頸部elastographyでは妊娠の経過による子宮頸部の硬度分布の変化を評価することが可能であると考えられた.

2).子宮頸部を5つの領域に分け,それぞれの領域に異なる硬度とBモード像を有する子宮頸部ファントムを作製した.子宮頸部の圧迫には経腟超音波プローブに装着できるバルーンを作製し,これらを用いてelastographyを施行した.ROIの設定はA:子宮頸部全体・B:子宮頸部前唇のみ・C:子宮頸部前唇のうちプローブ直下のみの3通りとし,子宮頸部中央部における正診率(面積比)を3群間で比較したところ,CではA・Bそれぞれに対して有意に正確な組織弾性分布を示した.圧迫方法については,A:ゆっくり大きく圧迫する(2秒間に1回程度)・B:早く細かく圧迫する(1秒間に3回程度)の2通りとし,組織弾性イメージングの評価が可能であった(カラーがのった)時間の割合を両群間で比較したところはA:36.97%・B:64.30%とBの方法がより良好な結果であった.子宮頸部の硬度の正確な評価には標的を絞った一定のROIを設定する必要があり,また圧迫方法については早く細かい圧迫操作が組織弾性分布を評価するのに適していると考えられた.

 現在,2).の結果に基づき1).の結果の見直しを行っているところである.本シンポジウムではこれらの結果を報告するとともに本法の臨床的有用性及び問題点について述べる.