Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム14
各領域におけるStrain Imaging の臨床応用とその開発

(S178)

ARFIによる肝疾患診断

Diagnosis of liver disease using ARFI

飯島 尋子1, 2, 田中 弘教1, 2, 西口 修平1

Hiroko IIJIMA1, 2, Hironori TANAKA1, 2, Shuhei NISHIGUCHI1

1兵庫医科大学肝胆膵内科, 2兵庫医科大学超音波センター

1Division of Hepatobiliary and Pancreatic Medicine, Department of external Medicine, Hyogo College of Medicine, 2Ultrasonography Center, Hyogo College of Medicine

キーワード :

慢性肝炎の確定診断は肝生検による組織診断がgold standardとされる.しかし肝生検は侵襲的検査法であり頻回の診断ができないことや限られた標本で診断することなどの欠点もある.
従来,肝機能や肝予備の評価は,肝実質細胞の機能評価を意味し検討されてきた.近年,治療技術の進歩に伴い,組織学的診断に迫る精緻な評価が必要とされる.内科領域では肝硬変,慢性肝炎の線維化分類,インターフェロンなどの治療評価や劇症肝炎の重症度判定,外科領域では肝切除や肝移植の適応などを決定するうえで重要である.Virtual Touch Tissue Quantification法は,Child-Pugh分類のような検査所見に基づく評価法ではなく慢性肝疾患の硬さを評価する新しい非侵襲的診断法として開発された.慢性肝疾患の組織学的分類と比較検討する機会を得たので報告する.
方法:対象は,健常人14例(男性7例,女性7例),肝生検により組織学的に診断された慢性肝疾患患者160例(C型110例,B型25例,B+C2例,NBNC23例.男性88例,女性72例.年齢は21歳〜94歳,平均56歳).Siemens Acuson S2000(Siemens medical systems, Germany)ver1.0もしくはver1.5に搭載されたARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)を用い,仰臥位にて肝右葉,左葉より3〜5回測定しその平均値を求めて測定結果とした.なお,測定値が大きく乖離した場合にはその値は削除した.慢性肝炎患者に対しては,組織の線維化の程度を新犬山分類に基づいてF1からF4に分類し測定値と比較検討した.統計学的有意差検定はt検定にて行った.
結果:F3とF4間には有意差を認め,F1とF2,F2とF3にも差を認めた(Fig1).Child-Pugh分類を規定する血液生化学検査との相関は,Alb(p<0.001,r=0.418),TBil(p=0.001,r=0.279),PT(p<0.001,r=0.539)であった.ALT,血小板も弱い相関を認めた.
考察:慢性肝疾患の非侵襲的線維化診断で血小板数は,最も簡便な線維化の推定方法であるがばらつきも大きい.その他血液検査や身体所見から非代償性肝硬変の診断は可能であるがF3とF4の鑑別は困難とされる.近年フィブロスキャンやエラストメーターなど超音波技術を応用した非侵襲的診断方法が開発されその有用性が報告される一方その欠点も明らかとなりつつある.ARFIによる肝線維化診断は,熟練度を要さず短時間かつ正確にB-modeにて測定部位を確認できる点や脂肪化の有無による測定誤差が少ない点が優れる.結論:ARFIによる非侵襲的診断法によりF1〜3とF4の鑑別が可能である.