Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム14
各領域におけるStrain Imaging の臨床応用とその開発

(S177)

Strain imagingによる局所心機能評価とその臨床応用

Clinical applications of strain imaging in assessing regional cardiac function

瀬尾 由広, 石津 智子, 青沼 和隆

Yoshihiro SEO, Tomoko ISHIZU, Kazutaka AONUMA

筑波大学循環器内科

Cardiovascular division, University of Tsukuba

キーワード :

(目的)局所の心機能を評価できるストレイン(strain)やストレインレイト(strain rate)法が注目されている.現在,心筋の歪を推測する方法としてspeckle tracking法が注目されている.我々はspeckle tracking法を左室機能評価や各種心疾患の病態評価に臨床応用した.
(方法)超音波診断装置は,GE社製Vivid 7,東芝社製Aplio,Artida,およびPhilips社製iE-33を使用した.3Dおよび,内膜,外膜側を分離したstrain imagingの解析は東芝社製のシステムを用いて行った.
検討1:正常例での2D,3Dストレイン値の検討
正常20例を対象として左室短軸断面で得られるradial strain(RS),circumferential strain(CS)値について左室局所間での差異を検討した.
RS, CS値は,中隔側と比較して左室自由壁側で有意に大であった.その理由として収縮期心尖部方向へのtranslationとそれによるout of planeの影響が考えられた.これを検証するため,3D心エコー法により求めたRS, CS値と比較したところ,2Dと3Dのstrain値の差と収縮期心尖部方向への移動距離との間に相関が認められた.
結論1:2D strain値は,左室のtranslationの影響を受ける可能性がある.
検討2:左室内dyssynchrony検出に関する検討
CRTを受けた55症例を対象として,strain時間曲線から収縮のタイミングを評価し,CRTに対する効果予測に有効か検討した.RSの第一ピークを収縮開始の計測点として,その最早期および最遅延部位での時間差(Td)を計測した.34例(62%)がCRTのレスポンダーであり,Tdの感度は85%,特異度は100%であった.
結論2:strain imagingによる左室内dyssynchronyの検出は,CRTのレスポンダー予測に有効である可能性が示唆された.
検討3:虚血性心疾患の診断に関する検討
高度冠動脈狭窄を有する狭心症例における虚血領域と正常例において,肉眼的に壁運動が正常な左室壁の心内膜側と心外膜側RS値の相違について検討した.正常群の最大RS値は,内膜側>外膜側であるのに対し,狭心症例では内膜側<外膜側であり,内膜側RS/外膜側RS比は狭心症群で小であった.
結論3:高度冠動脈狭窄例では収縮期心内膜側心筋の壁厚増加障害が認められた.Strain imagingによる安静時心内膜側壁運動解析が新たな心筋虚血検出の手法として有用である可能性が示唆された.
検討4:大動脈弁閉鎖不全症における潜在的心筋障害の診断に関する検討
心機能(EF)が保たれた大動脈弁逆流症(AR)における心筋内膜と外膜側の心筋収縮を解析し,重症度による相違について検討した.EF>50%以上の中等度AR 23例,重症AR 24例および正常コントロール26例を対象とし,収縮期最大RSを心筋全層,内膜側,外膜側で計測した.AR重症例では内膜側RSが,コントロール,中等度ARより有意に減少していた.
結論4:重症AR例では,EFが保たれていても潜在的な心筋障害が存在する可能性が示唆された.
(総括)
Strain imagingは従来の定性から定量評価による壁運動評価を可能とし,これまで臨床的に検討できなかった局所心機能評価を可能とする手法である.