Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム13
組織弾性イメージング技術の新展開

(S174)

静的手法による組織弾性イメージング

Elasticity imaging based on a static method

岡村 陽子, 久我 衣津紀, 神山 直久

Yoko OKAMURA, Itsuki KUGA, Naohisa KAMIYAMA

東芝メディカルシステムズ超音波開発部

Ultrasound Systems Development Department, Toshiba Medical systems Corp.

キーワード :

【はじめに】
組織の硬さは,様々な領域で臨床的に有用な情報を提供し,検査のフローで重要な役割の一部となっている.硬さを評価する手法には,相対的なものや絶対的なものが種々存在するが,生体安全性が確保された現在の技術の範疇で,臨床適用の簡便さを考えると,現時点では組織の相対的な歪みを解析し画像化するものが主流となっている.ただし,相対的な歪みの計測だけみても,その手法は単一ではない.我々が提案するElastography imaging(EI)は,組織からのドプラ信号(TDI)を利用した歪みイメージングである.
【手法の原理】
TDI法は,循環器の領域で発展した技術であり,現在では心筋の動態の定量評価に不可欠の技術となっている.心筋は自発運動するが,乳腺用EIはプローブで生体を圧迫,解放することで生体内各所のドプラ信号を計測し,その速度情報から局所の歪量を計測し2次元マッピングするものである.EIの解析に使用される速度データは,RawDataが用いられる.RawDaraからはドプラのパワー値と分散値も計測可能なため,これらをスペックルに起因する速度信号のばらつきの軽減に利用し,解析結果の安定性を高めている.また本手法は,圧迫または解放区間の歪み量の積算値を用いているため,徐々に変化する歪情報を安定して得ることができる.ところで歪の計算には,2点間の基準長(Derivative Pitch(DP))の定義(プリセット)が必要となるが,DPを大きくしすぎると空間的に微細な変化が検出できず,一方で小さすぎるとスペックルノイズの影響で計測精度の低下が起こってしまう.このため,異なる診断領域ごとに適切なDPに変更可能となっている.
【使用時のノウハウなど】
本手法で適切な結果を得るための,組織圧迫/解放時のノウハウなども情報も徐々に得られている.圧迫は,強く深いものである必要はないが,垂直方向にしっかり押すことが重要である.圧迫開放のスピードは,組織を予備的に何度か圧迫開放し,開放時に組織が自発的に戻る時間長に合わせて行うとよい.歪値の詳細情報としては,設定した複数ROI内の圧迫/解放区間における歪量の比を計算可能の他,各ROIの歪みの変化をグラフ表示でき,データが適切に収集できたかの指標にも利用可能である.
【今後】我々の経験に拠れば,上記歪グラフの変化量は必ずしも線形増加しておらず,組織の非線形性が観察されていることから,今後は非線形歪の特徴なども研究対象となることが示唆される.またElastographyは,乳房を代表とする体表領域で発展してきたが,他の分野への応用も開始されており,超音波診断の新たな可能性が期待される.並行して,本手法によるアーチファクトの原理や限界の共有や理解も臨床応用の際には不可欠である.