Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム13
組織弾性イメージング技術の新展開

(S174)

横方向変調法による2次元変位ベクトル推定

2-D Displacement Vector Estimation using Lateral Oscillation Method

山川 誠1, 近藤 健悟2, 椎名 毅3

Makoto YAMAKAWA1, Kengo KONDO2, Tsuyoshi SHIINA3

1京都大学工学研究科, 2筑波大学システム情報工学研究科, 3京都大学医学研究科

1Graduate School of Engineering, Kyoto University, 2Graduate School of Systems and Information Engineering, University of Tsukuba, 3Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
組織の硬さ情報を計測する方法として,これまで私たちは主に超音波ビーム方向の変位分布や歪み分布を推定する手法の研究開発を行ってきた.一般的に超音波による動きベクトル検出においては,ビーム方向成分の推定精度は良いがそれに直交する横方向の推定精度は悪い.これは,超音波の点広がり関数がビーム方向には中心周波数の周期で振動しているため,わずかな組織の動きに対しても検出感度が高いのに対し,横方向は振動がなく,しかも点広がり関数の幅がビーム方向に比べ広いため動き検出に対して鈍感であった.そこで,本研究では近年いくつかのグループで研究が行われている横方向変調法により横方向にも点広がり関数に振動を作成し,横方向の動きベクトルの検出精度向上を試みた.
【方法】
横方向変調法は超音波の送受信時に行われるアポタイズ(各素子に対する重み付け)をセパレート型(2か所にピークを持つような形)にすることによりビーム方向だけでなく横方向にも振動する点広がり関数を作成する方法である.もともとは平面波送信を行って受信のみで横方向変調する方法[1]が考えられたが,最近では送受信ともに横方向変調することにより横方向の検出精度を向上する方法[2]が試みられている.ここで,横方向変調の変調周波数を深さに対して一定に保つためにはアポタイズを深さごとに変えなければならない.そのため,送受信ともに横方向変調を行うと送信回数が膨大になってしまう.そこで,点音源で素子数回だけ送信して後処理で仮想的にアポタイズを変化させた信号を作成することが行われている.しかし,点音源で送信すると送信パワーが弱いため,ノイズに弱く計測できる範囲が限られてしまう.そこで,本研究では複数素子を用いて仮想的な点音源を作成し,この仮想点音源を用いた送信法により横方向変調を試みた.また,ビーム方向および横方向に変調された信号から2次元変位ベクトルを推定する方法としては,これまで私たちが開発してきた複合自己相関法[3]を2次元に拡張した2次元複合自己相関法を用いた.
【結果】
送信に仮想点音源を用いることで従来の点音源を用いる方法に比べ,深部まで計測できることが確認された.また,横方法変調法を用いることで通常の送受信法では精度が悪かった横方向の変位成分を精度良く推定することができた.
【まとめ】
送信に仮想点音源を用いた横方向変調法により送信回数は通常の送信と同じままで,深部まで精度よく2次元変位ベクトルを計測できることが確認された.これにより精度の良い2次元変位ベクトル推定が可能になるため,組織弾性イメージングの応用範囲がさらに拡大すると期待される.今後は,ファントム実験などにより実験的に横方向変調法の精度,分解能などの検証を行っていきたい.
【参考文献】
[1]J.A.Jensen, IEEE UFFC., Vol.43, No.3, pp.837-851, 1998.
[2]H.Liebgott et al., Proc. of IEEE Ultrason. Symp., pp.2168-2171, 2006.
[3]T.Shiina et al., Proc. of IEEE Ultrason. Symp., pp.1331-1336, 1996.