Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム13
組織弾性イメージング技術の新展開

(S173)

血管壁弾性計測

Ultrasonic Measurement of Vessel-Wall Elasticity

長谷川 英之1, 2, 金井 浩1, 2

Hideyuki Hasegawa1, 2, Hiroshi Kanai1, 2

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院工学研究科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Engineering, Tohoku Univerisity

キーワード :

1. 目的
動脈硬化症による組織変性に伴い,動脈壁の弾性特性は変化する [1].また,プラークの易破裂性を左右する因子として,その機械的特性は重要な要素である.本研究グループでは,超音波を用いて心周期内における動脈壁のミクロンオーダの“厚み変化 (径方向ひずみ)”を超音波により高精度に計測することによって,動脈壁の局所弾性的特性を評価する手法を開発してきた.
2. 原理
動脈壁の変位分布を高精度に計測してひずみを算出するため,本研究グループでは超音波ビーム方向の位相変化に基づく変位推定法を開発した [2].位相変化に基づく変位推定法では,超音波の中心周波数の情報も必要である.しかし,パルス状超音波は単一周波数ではなく有限の帯域を有するため,散乱体が多数存在する場合,干渉により中心周波数が見掛け上変化し,変位の推定精度を低下させる.本研究グループでは,複素相関法を用いてこのような中心周波数の変動の影響を低減する手法を開発した [3].
3. 実験結果
塞栓症患者のバイパス手術の際に摘出された大腿動脈を用いてin vitro実験を行った.図(a-1)と(b-1)はそのBモード断層像である.図(2)から分かるように,図(a)の部位は図(b)の部位に比べひずみが非常に小さい.図(3)は,内圧変化から算出した円筒管壁の応力分布を用いて弾性率分布を推定した結果である.図(a-3)中に緑の線で示した領域には石灰化が見られた.一方,図(b-3)の部位はほぼ均一に線維組織(平滑筋と膠原組織の混合組織)から構成されていた.このように,本手法により得られた弾性特性分布は組織性状と良く対応している.
4. 総括
本稿では径方向変位およびひずみに着目して弾性特性を計測したが,ずりひずみもプラークの易破裂性に関与すると考えられるため,現在では超音波ビームに直交する方向の超音波信号の位相を用いて2次元変位を推定する手法などを検討している [4].
参考文献
[1]Lee, et al: Circulation, 1991.
[2]Kanai, et al: IEEE Trans UFFC, 1996.
[3]Hasegawa and Kanai: IEEE Trans UFFC, 2008.
[4]Hasegawa and Kanai: 2008 IEEE Intern’l Ultrason Symp, 2008.