Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム12
超音波でしか診断できなかった消化器疾患症例

(S171)

症例から学ぶ超音波検査の意義

Significance of ultrasonography

松本 直樹, 小川 眞広, 阿部 真久, 中河原 浩史, 廣井 喜一, 山本 敏樹, 森山 光彦

Naoki MATSUMOTO, Masahiro OGAWA, Masahisa ABE, Hiroshi NAKAGAWARA, Yoshikazu HIROI, Toshiki YAMAMOTO, Mitsuhiko MORIYAMA

駿河台日本大学病院内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Surugadai Hospital

キーワード :

【目的】
現在腹部領域における検査法には,超音波検査,CT,MRI,内視鏡検査などがある.これらの検査法の比較において超音波検査の最大の欠点は客観性の低さでありそれ故に精密検査は他の検査法にゆだれられていることも多い.しかしリアルタイムに高分解能で観察する超音波検査のみで描出され診断が可能であった症例も少なくない.そこで今回我々の施設で実際に経験した症例を検証し,他の検査法と比較し超音波検査の有用性を検討すると共に超音波検査法の意義について考える.
【症例1】
65歳女性.1ヶ月前より徐々に腹部膨満感を自覚し,1週間前より腹部膨隆が見られたため当科受診した.[既往歴]58歳:脳出血,慢性C型肝炎(59歳時,インターフェロンでウイルス消失)[入院時現症]腹部は膨隆著明で波動を触知.その他特記すべきこと無し.[入院時検査所見]WBC 6,300/μl, Hb 10.8g/dl, Plt 27.8×104/μl, PT 91%, T-Bil 0.53mg/dl, AST 25U/l, ALT 8U/l, BUN 10.4mg/dl, Cr 0.79 mg/dl, CRP 6.2mg/dl, TP 7.2g/dl, Alb 3.1g/dl, CEA 0.6 ng/ml, CA19-9 2.0 ng/ml, CA125 5988.9 ng/ml, [腹部超音波検査]肝に慢性変化はほとんど見られず,腹水が大量に貯留していた.腹水は背側にdebris様エコーが見られ,腎前面に最大14mmのisoechoicな隆起性病変が多数認められた.卵巣は描出困難だった.[腹部CT]腹水大量に貯留.腎前面の構造物ははっきりせず.[経過]腹腔穿刺の結果腹水の性状は淡黄色混濁で細胞診はclass V(腺癌)であった.CA-125高値より婦人科依頼したところ,経腟超音波検査でも卵巣は確認されず,serous surface papillary carcinoma(SSPC)の診断のもと,化学療法(パクリタキセル,カルボプラチン併用療法)を開始した.第1クール終了時,腹水は大幅に減少した.
【症例2】
42歳男性.慢性B型肝炎,慢性C型肝炎のため当科,盲腸癌術後のため当院外科通院中.肝癌スクリーニング目的で超音波検査を行った.[既往歴]41歳:盲腸癌→手術.[経過]肝は慢性肝障害パターンだった他,小腸漿膜側から内腔へ突出する10mm大のhypoechoic massが見られた.その後腸閉塞で開腹手術となった際,腹膜播種が認められた.
【まとめ】
超音波検査は空間分解能が高く,検査時に細かな観察の目を持って施行することで,他の検査法では描出できないような微小病変も指摘可能であることが確認された.特に装置の進歩と共に解像力が向上しており,常に目的意識を持ち微細な所見が描出されることを自覚しながら検査を施行することが重要と考えられた.