Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム12
超音波でしか診断できなかった消化器疾患症例

(S170)

超音波検査が有用であった20mm以下の浸潤性膵管癌の5症例

Five cases of invasive ductal carcinoma within 20mm in size which abdominal ultrasound were very usuful for diagnosis

内田 香織

Kaori UCHIDA

国立がんセンター中央病院放射線診断部

Department of Diagnostic Radiology, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【背景・目的】
近年,超音波画像技術の進歩に伴い,超音波診断能 の著しい向上を認める.膵疾患の診断においても例外ではなく,なかでも浸潤性膵管癌をより早期の段階で発見し,的確に診断迅速 な治療に導くことが重要な課題である.今回,小さな浸潤性膵管癌 のうち,CTにて腫瘍検出が困難であった浸潤性膵管癌について,それらの頻度と超音波像を検討したので報告する.
【対象と方法】
当院で2006年1月〜2008年10月の期間中に切除され,病理組織学的診断にて腫瘍の大き20mm以下と診断された浸潤性膵管癌は,12症例,12病変で あったこれらの病変は,すべて腹部超音波にて浸潤性膵管癌と診断 可能であった.うち,経静脈性造影CTにて腫瘍本体の存在診断が困難であった3症例,3病変を対象とした.また,前記対象に当てはまらないものの,超音波にて20mm大以下の浸潤性膵 管癌と診断し,造影CTでは存在診断困難であった浸潤性膵管癌切除例 2症例,2病変を加え,合計5症例,5病変の超音 波像を検討した.すなわち,腫瘍の形状,境界,輪郭,内部エコー,尾側主膵管拡張の有無および胆管拡張の有無,カラードプラ では,内部血流信号の有無あるいはレボビストを用いた造影所見(3病変)を検討した.超音波診断装置は,東芝メディカルシステムズ社製Aplioである. なお,CEA,CA19-9値は,全症例で基準値以内であった.
【結果】
病理診断にて20mm以下であった浸潤性膵管癌12病変中,3病変(25%)にて造影CTで腫瘍の存在診断が困難であった.超音波所見は前述のごとく,5症例,5病変を検討した.存在部位は,膵頭部3病変,膵体部2
病変,超音波上の大きさは,10〜15mm(平均12.6mm 大)であった.形状は,すべて不整形を示し,境界明瞭1病 変,不明瞭4病変であった.腫瘍輪郭はすべて不整を示し,2病変にて明瞭な棘状突起様構造を認めた.内部エコーは,全病変にて低エコーを示した.3病変では尾側主膵管拡張(6〜10mm径)を伴い,2病変では尾側主膵管拡張を伴わな かった.胆管拡張を伴う病変を認めなかった.5病変ともカラードプラにて内部血流信号を認めず,造影超音波(早期相)を施行した3病変中,内部不均一な造影効果を2病変に,腫瘍辺縁の造影効果を1病変に認めた.病理診断の肉眼的分類は,浸潤型2,結節型2,潜在型1病変,組織型は,中分化型管状腺癌4,高〜中分化型管状腺癌1病変であった.
【考察】
今回の検討では,病理診断にて20mm以下と診断された浸潤性膵管癌のうち,造影CTで腫瘍本体の存在診断が困難であった病変を25%認めた.小さな膵腫瘍の診断の際には,他のモダリティの 診断に頼らず,超音波で精査することが重要と考える.また,超音 波像は,全病変にて不整形,輪郭不整,内部低エコーを示した.腫瘍径が小さくとも,通常経験する比較的大きな浸潤性膵管癌と同様 の所見であった.ただし,尾側主膵管拡張を伴わない病変も存在したため,診断の際には主膵管拡張の有無に関わらず,腫瘍の直接所見を詳細に観察する必要がある.その際,より分解能の良好な高周波 linear または高周波convex probeが有効と考える.
【まとめ】
CTで腫瘍の検出困難であった浸潤性膵管癌について,その 頻度と超音波像を検討した.浸潤性膵管癌を疑う症例は,超音波で 精査すべきである.