Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム11
肝腫瘍診断における造影超音波の位置づけ

(S166)

肝腫瘍に対する術中造影超音波の検出能の検討

Evaluation of contrast-enhanced intraoperative ultrasonography for liver tumor

光法 雄介, 木下 亮二, 田中 真二, 野口 典男, 工藤 篤, 黒川 敏昭, 中村 典明, 有井 滋樹

Yusuke MITSUNORI, Ryoji KINOSHITA, Shinji TANAKA, Norio NOGUCHI, Atsushi KUDO, Toshiaki KUROKAWA, Noriaki NAKAMURA, Shigeki ARII

東京医科歯科大学肝胆膵外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【目的】
肝腫瘍の手術における術中の超音波は,病変の位置を確認し,切除範囲や術式を決定するのに必須の方法である.近年,体外の造影超音波が肝腫瘍の検出に優れることが報告されているが,われわれは,術中に造影超音波を行うことで,病変の検出能が高くなり,より適切な手術を行うのに有用であるかを検討した.
【対象・方法】
当科における2007年7月から2008年9月までの肝切除例121例のうち,肝細胞癌54例84結節,転移性肝癌(大腸9例,食道1例,副腎1例)11例33結節について検討した.造影剤はペルフルブタン(ソナゾイド)を使用し,0.5ml/回に統一して投与した.使用機器は東芝のXarioで,プローブは術中専用のPLT-705BTH(7MHz)を使用した.造影モードはpulse subtraction-lowモードで,trapezoid scanを行なった.術前には血管造影CT(53例)あるいはダイナミックCT(12例)による評価を行った.術中にはまずBモード超音波で観察し,その後造影を行い,血管イメージング,クッパーイメージングを行った.クッパーイメージで新たに病変を認めた場合は,適宜造影剤の再投与を行い,re-injectionイメージングで腫瘍血管ありと判断したものを切除した.切除標本を病理組織学的に検索し,病変の有無と個数を算出したのち,それぞれが術前のCT,術中のBモード,術中のクッパーイメージで検出されていたかを比較検討した.
【結果・考察】
肝細胞癌での検討では,術前CTの検出率は89.7%,偽陽性率は4.1%,術中Bモード超音波の検出率は91.0%,偽陽性率は2.7%,術中クッパーイメージの検出率は98.7%,偽陽性率は7.2%,であった.術中クッパーイメージは検出能が最も優れるが,偽陽性率も最も高かった.小さな病変では,re-injectionイメージングでも病変内部の血流の観察が困難であることなどが理由に挙げられる.しかし,術前CT・術中Bモードともに検出できず,術中クッパーイメージでのみ検出できたものが5症例において5結節あり,いずれの病変も大きさ1センチ以下の小さな病変であった.これらのうち,予定術式に加え追加切除を必要としたものは3例であった.転移性肝癌では,術前CTの検出率は89.3%,偽陽性率は16.7%,術中Bモードの検出率は85.7%,偽陽性率は11.1%,術中クッパーイメージの検出率は100%,偽陽性率は15.2%,であった.同様に術中クッパーイメージでの検出能が優れており,術前CT・術中Bモードともに検出できず,術中クッパーイメージでのみ検出できたものが2症例において2結節あった.また膵癌においては,術中のクッパーイメージでのみ肝転移病変を診断できたものがあり,不要な手術を回避できた.
【結論】
肝腫瘍に対する術中造影超音波は,術前CTや術中Bモードに比べて病変の検出能に優れており,取り残しのない切除,根治不能病変の手術の回避などに有用であると考えられる.一方,偽陽性率はやや高く,クッパーイメージやre-injectionイメージにおける,病変の質的診断精度の向上が今後の課題と考えられる.