Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム11
肝腫瘍診断における造影超音波の位置づけ

(S164)

肝臓外科における術中造影超音波検査の有用性−外科領域への新たな応用

Visualiazation of Liver Subsegment by Intra-Operative Enhanced Ultrasonography -for accurate anatomical oriented liver resection

安田 是和, 藤原 岳人, 俵藤 正信, 佐久間 康成, 清水 敦, 笹沼 秀紀, 仁平 芳人, 北條 宣幸

Yoshikazu YASUDA, Takehito FUJIWARA, Masanobu HYOUDOU, Yasunaru SAKUMA, Atsushi SHIMIZU, Hidenori SASANMUA, Yoshito NIHEI, Noriyuki HOUJYOU

自治医科大学消化器一般外科

Department of Surgery, Jichi Medical University

キーワード :

(背景と目的)肝臓外科領域において,術中超音波検査は必須の検査である.しかし従来の術中超音波検査においては,肝の区域,亜区域の肝内の境界を知るには,術中超音波検査による門脈や肝静脈の比較的大きな血管の走行から類推・判断する他なく,解剖学的変異の多い肝内の血流分布をすべて観察することは難しく,肝実質の区域(亜区域)の境界を知ることは困難であった.これまで肝区域,亜区域の境界は,摘出肝の鋳型標本を用いた報告などが報告されているが,術中にこれを知るには支配門脈への術中超音波ガイド下にICGを注入し肝を染色する方法,あるいは支配グリソン結紮によって肝表面にに現れる阻血域の観察による以外に方法はなく,肝表からは見ることのできない肝内での肝実質がどこで区域や亜区域の境界面を形成しているか,また肝切除後の残肝ドレナージの必要な肝静脈枝の同定などの情報を手術中に可視化し確認する方法はなかったといっても過言ではない.
また,近年の化学療法の進歩における大腸癌を中心とした多発肝転移の手術の必要性が増加しているが,化学療法後の肝組織はsinusoidal obstruction syndromeをはじめとする種々の影響を受けており,多発肝転移摘除のためには正確な肝内解剖を術中に知り,必要かつ最小限の解剖学的切除を行う必要性が求められている.さらに我々は新生児の急性肝不全に対する緊急生体肝移植の症例を2例経験し,成人ドナー・肝左葉外側上区域(S2)を用いたmono-subsegement liver graftを作成する新しい手術を施行した.これらの肝切除においては,graftの血流が十分に保たれていることと同時に,壊死となる阻血域が最小であることが求められ,従来に比しさらに正確な肝実質の血流支配を中心とした肝内解剖を手術中にモニターすることが極めて重要であある.
(方法)肝の区域,亜区域切除症例,生体肝移植症例において,従来の術中超音波検査によって,結紮が必要と判断されたグリソン鞘を一時的にクランプした後,超音波造影剤(ソナゾイド)を経静脈的に投与し,肝内血管,肝実質を経時的に観察.クランプした区域(亜区域)の非造影領域と血流の温存されている造影領域の境界を観察し,クランプされたグリソンの支配領域(非造影領域)を把握することにより,肝切離に必要なグリソン鞘を同定し,かつ肝内における肝実質の切離線を決定した.必要により超音波造影剤を繰り返し投与し観察した.生体肝移植ドナー手術においては,摘除される肝グラフト以外のグリソン鞘を一時的に遮断し,術前のCTvolumetryによってデザインされた切離線のデザインをもとに,切離線が適正であるか,肝グラフトのドレナージに必要な肝静脈が温存されているかを術中に判断しつつ手術を施行した.
(結果と結論)従来の方法に比し,さらに厳密な解剖学的肝切除が要求される症例において,術中造影超音波検査はB-mode画像やカラードプラ検査による画像では得られ難かった画像情報を描出することが可能であった.今後は肝静脈再建の適応の正確な判断などにも応用できると考えている.
造影超音波検査の肝臓外科領域における新たな有用性と意義を強調したい.