Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム10
一目見ておけば診断できるまれな心血管疾患

(S161)

心血管エコーによる大動脈・頸動脈・冠動脈病変の診断

Disorders of the aorta, carotid arteries and coronary vessels

杉岡 憲一, 穂積 健之, 松村 嘉起, 葭山 稔

Kenichi SUGIOKA, Takeshi HOZUMI, Yoshiki MATSUMURA, Minoru YOSHIYAMA

大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学

Department of Internal Medicine and Cardiology, Osaka City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
大動脈,血管の異常の診断において,経胸壁心エコー図,経食道心エコー図,血管エコーなどの超音波法は,非侵襲的なアプローチ法として有用である.
【大動脈】
大動脈においては,大動脈基部〜上行大動脈の一部までは経胸壁心エコー図で観察可能である.経食道心エコー図では大動脈基部,大動脈弓部から下行大動脈の腹腔大動脈レベルまでが観察範囲である.大動脈基部の異常所見として,大動脈弁輪拡張症(annulo aortic ectasia: AAE)がある.大動脈基部の拡大と上行大動脈の動脈瘤様の拡大をきたし,大動脈弁輪拡大により様々なレベルの大動脈弁逆流をきたし,基礎疾患としてマルファン症候群が重要である.また,動脈硬化性変化や大動脈炎症候群では紡錘型の上行大動脈の拡張をともなう場合がある.大動脈弓の観察には,主に経食道心エコー図が用いられるが,検出された大動脈弓プラークなどの動脈硬化性変化は,脳塞栓症発症の危険度と密接な関連がある.特に潰瘍性プラーク(ulcerated plaque) やまれではあるが可動性プラーク(mobile plaque)を有する場合は脳梗塞発症のハイリスク群である.
【頸動脈】
頸動脈は体表面近くを走行するため,エコーにより詳細な観察が可能である.頸動脈分岐部に好発する頸動脈プラークの存在や性状,頸動脈の狭窄所見の有無は,脳血管障害のリスクを評価する上で重要である.また,大動脈炎症候群は全身性の炎症疾患であり,頸動脈エコーでマカロニサインと呼ばれるびまん性の著明な壁肥厚を認めることがある.
【冠動脈・冠静脈洞】
冠動脈や冠静脈洞の拡大も有意な疾患を示唆する場合がある.経胸壁心エコー図で冠動脈起始部の拡大を認める場合には,冠動脈瘻が疑われる.カラードプラ法で心内腔や肺動脈において既存の疾患では説明できない異常血流を認める場合は,開口部からの流入血流である可能性がある.また,経食道心エコー図が,瘻血管の走行や開口部の検出に有用な場合もある.冠動脈瘻が肺動脈に開口する場合には,動脈管開存との鑑別を要する.一方,冠静脈洞の拡大を認める場合には,左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava: PLSVC)が疑われる.本症の存在は,ペースメーカー留置や心臓手術での右心房へのカニュレーションなどにおいて検討しておく必要がある.左肘静脈からコントラストエコー法を施行すると,右室にコントラスト剤が現れるよりも早く冠静脈洞に出現することにより診断できる.
本講演では,これらの大動脈,頸動脈および冠動静脈における一目見ておけば診断の手がかりとなりうる所見を概説したい.