Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム10
一目見ておけば診断できるまれな心血管疾患

(S159)

左室と左房の異常

Abnormalities of the Left Ventricle and Left Atrium

山田 聡1, 岩野 弘幸1, 佐藤 陽子1, 小室 薫2

Satoshi YAMADA1, Hiroyuki IWANO1, Yoko SATO1, Kaoru KOMURO2

1北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学, 2国立病院機構函館病院臨床研究部

1Department of Cardiovascular Medicine, Hokkaido University Graduate School of Medicine, 2Department of Clinical Research, Hakodate National Hospital

キーワード :

 心エコーを一目(ひとめ)見れば診断できる疾患を系統的に解説するとなると,勢い,思いつく疾患を挙げていって最後にそれらを分類しなおすことになる.教科書に載っていないからこそ,その疾患リストには意義があるかもしれない.「心エコーを一目見れば診断ができる左室と左房に関する比較的まれな疾患」を私なりに分類して示す.なお,「弁膜の異常」「腫瘍」「心膜疾患」は別項目となっているので,原則としてこれらを除く.
1.左室の異常
1)左室心筋の形態異常に特徴のあるもの:心サルコイドーシス1,心アミロイドーシス2などの特定心筋症,左室心筋緻密化障害3,心内膜心筋線維症4,Chagas(シャーガス)病,左室憩室5,仮性心室瘤6,心外膜下心室瘤7,心筋内血腫
2)左室内腔の形態異常に特徴のあるもの:左室心筋緻密化障害3,心内膜心筋線維症4,パラシュート僧帽弁など乳頭筋を含む僧帽弁複合体の異常,大動脈弁下部狭窄8
3)左室壁運動の異常に特徴のあるもの:たこつぼ型心筋症9
4)血行動態の異常に特徴のあるもの:心アミロイドーシス2
2.左房の異常
1)肺静脈の形態異常:肺静脈狭窄,部分肺静脈還流異常
2)左房壁の形態異常に特徴のあるもの:左房壁解離10,心アミロイドーシス2,悪性リンパ腫などの悪性腫瘍
3)左房内腔の形態異常に特徴のあるもの:三心房心11,僧帽弁上部狭窄輪11
4)冠静脈洞の形態異常に特徴のあるもの:左上大静脈遺残,冠静脈洞型心房中隔欠損
1心サルコイドーシス:心基部心室中隔の壁菲薄化と高度収縮低下が典型的所見.しかし,病変はいずれの部位にも,また瀰漫性にも起こりえる.壁肥厚も生じる.
2心アミロイドーシス:両側の心室と心房の瀰漫性壁肥厚,心室壁のgranular sparkling所見,弁膜の肥厚,心嚢液貯留が特徴的.拘束型心室拡張障害をきたし,進行すると収縮障害を呈する.
3左室心筋緻密化障害:左室壁の網目状の著明な肉柱とその間の深い間隙,緻密層の菲薄化が特徴的.心尖部に好発し,壁運動低下を伴う.血栓を生じやすい.
4心内膜心筋線維症:心内膜の線維化による心内膜に沿う高エコー領域.心尖部の閉塞や血栓を生じやすい.
5左室憩室:内腔に連続する左室壁の嚢状欠損で,心筋の連続性と周囲壁の収縮は保たれる.
6仮性心室瘤:左室自由壁の梗塞巣の心筋が途切れ,外方へ突出する瘤.幅の狭い入口部で左室と交通する.
7心外膜下心室瘤:心筋梗塞による比較的小さい瘤で,心筋の連続性は失われているが,腔や血腫が外方に突出していない.
8大動脈弁下部狭窄:大動脈弁直下の左室流出路において,膜様構造物が三日月状に隔壁を生じるものとトンネル状の狭窄をきたすものがある.
9たこつぼ型心筋症:冠動脈支配領域と一致しない心尖部を中心とした広範囲の収縮低下と心基部の過収縮が特徴.
10左房壁解離:大動脈解離や感染性心内膜炎の弁輪部膿瘍が波及して心房壁の解離を生じることがある.
11三心房心と僧帽弁上部狭窄輪:左房内の線維性膜様構造物により左房が中央部で二分される場合を三心房心,僧帽弁輪近傍に存在する場合を僧帽弁上部狭窄輪と呼ぶ.